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12月読了読書感想小説

【ネタバレ有】奈良監獄から脱獄せよ/和泉桂【初読感想】

この記事は約9分で読めます。

「奈良監獄から脱獄せよ」というタイトルと表紙の格好良さに惹かれて、手に取った一冊。
奈良監獄って個人的にめっちゃ興味があるんで気になるし、舞台は大正っていうし、大正時代が大好きな私からすると、「おおー! これは面白そう!!」とワクワクしてました。

あれかな。期待値を上げすぎたのかも。

とりあえずこれだけは腑に落ちないんだけど、奈良監獄って奈良県にあった監獄のはずなのに、なんで登場人物全員が関西方面の言葉遣いをしてないんだ……?(私にはどうにも標準語を喋ってるように見えるんだけど、なんで?)

あと、大正時代が舞台のはずなのに、どうして大正時代の雰囲気がしないんだ?
登場人物の喋り方もそうだけど、全体的に大正時代の雰囲気や空気感がしなくて、かぎりなく現代物の小説を読んでいる気分になっていました。

……んー……、なんというか微妙。

あれかな。この本に何を求めるか? って話なのかな。
私は「奈良監獄から脱獄せよ」っていうタイトルから、有名な建築物である奈良監獄を舞台にした脱獄小説を想像してたんだけど、ほぼその要素はない。

いや、脱獄はするんだけど。
その脱獄を決意するのが話の中盤からなので(それ以前にも脱獄の話は何度か出てくるけど、基本的に主人公は消極的なので「……え、脱獄、するんだよね……?」と読んでいる側がタイトル詐欺を疑いたくなった)、なんか「脱獄するぞー!!!」って雰囲気がない。

で、終盤の脱獄も結構時の運に助けられているので、「それでいいのかよ……」となる。(まあこの点は「お前が無実ならば神が救ってくれる」みたいな台詞が作中に出てくるので、無実の主人公達を神が救ったともとれるんだけど、脱獄ものでそんな時の運に頼っていいのかって気持ちはある)

ようするに、ワクワクが足りない。
主人公が頑張って脱獄計画を立てているのは分かるんだけど、その感情が伝わってこないから(中盤までは脱獄自体考えてないし)、ワクワクがない。

では中盤までは何が描かれているかというと、主人公の弓削を取り巻く人間関係だったり、相棒になる羽嶋君との交流だったり、重要そうなポジションに見えたのにあっさりと死んでしまう山岸との話だったり……。
まあ、相棒になる羽嶋君との交流は大事だよなって思うんだけど、でもそれもあんまりぱっとしないというか、全体的にこの本、ぱっとしない展開が多いんだと思う。

山岸も頭を殴られてあっさり死ぬし、あっさり死んだ山岸を死ぬまでは迷惑がっていた主人公がいきなり過去の事を思い出して悲しむし。
花壇の下に隠されていた紙切れとか、結局なんだったんだ? ってなるし。
ぱっとしない展開が多いというよりは、伏線っぽく見せかけておいて実はなにもなかった(もしくは回収するつもりもなかった)ものが多い話なんだよなぁー。

まあ、その最たるものが、主人公が奈良監獄に収監される理由になった女の子の遺書なんだけど。

作中で「最後の遺書」と思わせぶりに言っておいて、最後まで内容が語られないのって……、どういう了見なんだ……?(読んでいる私からすれば彼女が自殺なのは間違えようのない事実なので遺書の内容関係なく主人公の冤罪は分かるんだけど、彼女の遺書に主人公が動揺してるわけだし、ストーリー展開的には遺書の内容が分かるもんなんじゃないの?)

んー……、やっぱりなんというか、微妙なんだよなぁ……。
脱獄のシーンはワクワクしたけど、全体的に淡々と読めるんだよなぁー……。

もしかすると主人公の弓削と羽嶋君の友情をメインに見れば、いい話なのかもしれない。
でも私には色々引っかかる部分があって、「……で? 最終的にあの話はどうなったの?」ってなるから、なんかモヤモヤする。

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