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小説

栞と嘘の季節/米澤穂信|米澤先生の文章が好きだなと改めて実感したという話。【ネタバレ感想】

この記事は約3分で読めます。

というわけで、前回図書委員シリーズの第一弾を読んで、「うぉぉぉ! 面白かった!」となっての、第二弾目。
この間に色々ありまして(具体的にはメガテンの新作が出たり、新しいゲームの体験版をやってたり)、読む機会がなくて少し積ん読してたんですが、読み終わったので感想を書く。

栞と嘘の季節【電子書籍】[ 米澤穂信 ]

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(2024/7/18 13:44時点)
感想(1件)

いやぁー……、米澤先生の文章って好きだわ。
そして言葉選びも好き。
ようするに全部好きなんだろうなと、実感中。

さくさく読めて面白くて。
でも読み進めていくうちに、思わぬところで心の深い部分をぐさっと刺されて。
その傷にうぐぐとなりながら読んでいくと、最後は寂しいような美しいような、綺麗で複雑な気持ちで読み終わる、そんな本でした。

最後のね、読み終わりがいいですよね……。

前回同様にハッピーエンドといえばそうでもなく、どっちかといえばビターエンド。
不幸か幸せかでいえば、不幸になってる人もいて。
それはその人の自業自得な面もあるんだけど、でもそうなったきっかけが「あぁー……、分かるかも知れない……」ってなる、誰でも陥りそうなひっそりとした落とし穴みたいなのが好き。
それぞれの登場人物達の目的は達せられたし、物語としては「これにておしまい」でいいんだけど、この後も彼らの人生は続いていくんだなと(その後の人生のほうが長くて、それは平坦なものじゃないんだろうなと感じさせる終わり方)が、物悲しいような切ないような終わりになってて好き。

特に「切り札」がね、いいよね。
この話の「切り札」って、形は違えどみんな持ってるんだと思うんだわ。
それは簡単に言えば、親友だったり家族だったり。暴力や致命傷を負わせるものではなくて、自分の心を安定させたり安らげたりするものなんだと思う。
ではどうして、この話に出てくる「切り札」はあの形になったんだろう? って考えると、あの形が最適解で、あの形をとらなくては「切り札」として持っている意味がなかったんだと思う。
人を傷つける(あるいは殺す)ぐらいの力がないと持ち主が安らげないぐらいの強さをもった「切り札」が必要だったっていう気持ちと、でも本当はそこまでの暴力性は必要なかったんだよね?(そこまでの力を手にしても持ち主は不幸になるよね?) っていう作中でのアンサーが、絶妙にこの話の複雑な空気感になってて好き。

人を傷つけられる優越感を強調するなら「武器」でもいいわけで。
でもそこをあえて「切り札」にすることで、人を傷つける以外の役割も持っていたはずの存在を、文字通り「武器」として使った登場人物達のその後も、「そうなるよねぇ……」って思ってしまう。

この独特な雰囲気が好きで、「あー……、やっぱり米澤先生の書く話ってすきだわぁー」ってなる。

で、登場人物がみんな「嘘」をついているわけでして。
「嘘」というと聞こえは悪いけど、自分の矜持を守るための嘘だったり、誰かを守るための嘘だったり、分かりやすく「誰かを傷つける嘘」ではない「嘘」が散りばめられていて、それがいい感じに話を切なくさせたり、やりきれなくさせたりしてるのが好き。

切り札と嘘。
よくよく考えてみると、その両方に少なからず誰かの「自分以外の誰かを想うやさしさ」が込められてるんだよなぁ……。(一方でこの話は「切り札」によって確実に誰かが害されていく話でもあるんで、優しさと悪意が入り交じってて、読んでてなんともいえない複雑な気持ちになる)

一見嘘をついてなさそうだったキャラでさえ、「え。あんた、嘘をついてたの?!」ってなるんで、そういえばこの小説ってミステリー小説だったわ! と思い出したりしてました。
読んでる側の感情の揺さぶり方がいいんだよなぁー……、やっぱり好きだなぁー……。

読んでいて楽しかったです。ごちそう様でした。

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