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【ネタバレ有】まず良識をみじん切りにします/浅倉秋成【初読感想】

この記事は約9分で読めます。

twitterでめっちゃ騒がれていたのと、タイトルが面白すぎたので(まず良識をみじん切りにしますってどういうタイトルだよ……、と)、手に取ってみた一冊。

短編集なんですよね。

「短編集かぁー……、私、短編集苦手なんだよなぁ。感想書くの難しいし」と思いながら読んでいたんですが、やっぱり短編集だからこその難しさとかを感じつつ(途中の野球の話とか、野球全く知らないんで途方に暮れました)、読み終わって感想を書いています。

んー……! 良識をみじん切りにされてきました!!

正直、理解は追い付いてない。
この本に対して“理解”って言葉は適切なのか? と素直に思う。

ちょっとどこか違和感がある奇妙で深いな人達の、どこか知ってる暗闇の底を眺めていくようなそんな短編集……、なんですよね。

暗闇を見て、「私は理解しました」っていっても、目の前にあるのは暗闇っていうもので形なんてない……みたいな感覚なんですよねぇー、うまく表現できないけど。

各話にでてくる登場人物達の悩みや行動は、どこか心当たりがある。
心当たりとまではいかなくても、「あー……、そういうのあるよなぁー」とか「いやいや、それっておかしいだろ」とか、読んでいくと心の中が不快にきゅっと軋むような音がする。

登場人物達の悩みが行動自体は突飛もないものが多くて、全体を見ていくと「いやぁー、変だわ」って苦笑い(もしくは失笑?)する話なんだけど、そこから一歩踏み出して覗き込んでみると、「……でもこの感情、どこかで見たことあるな?」と考えると、ヒヤッとする感覚が出てくるの、なんだろうね……。

特に4番目に出てくる「膜」は、なんとなく私にも想像できる。
ふとした時に悪意みたいなものがじんわりと出てきて、「あー……、ここで××したらどうなるんだろうなぁ」って思うんだけど、でも周囲の人間とか自分の状態とかを見ると、「あ、でも今は無理だな」ってなる感覚。
その「××」って悪辣で人間がやっちゃいけないことも含まれたりして、でもじんわりと沸いてくる悪意は同じくじんわりと沸いてくる自制心によって阻止されている。

……四番目の話は、「でも、その「自制心」がある瞬間効かなくなったら?」という話なのだと思った

誰しもが「膜」を持っているわけではないと思うけど(私は「あー、私にもあるなぁー、「膜」」と薄ぼんやり思ったけど、世間的には「私にはそんな「膜」なんてありません。他人に対して悪いことをしようなんて微塵も思っていません! って人もいるだろうし)、でも「膜」を感じたことがあるなら、なんとなく破れた瞬間の怖さも想像できる。

実は4番目の話は冒頭は野球の話だったので、野球が全く分からない私は「野球? ……分からない。野球かぁー、これ読み飛ばしていいかな」って思いながら文字をとりあえずなぞって読んでいたので、終わりになって私自身も感じた事がある「膜」の話が出てきたときはびっくりしました。
でも「膜」のこと、なんとなく分かるんだ。私達は確かに「膜」に守られてるんだと思う(この話の通りに言うならば)
そして善人でいるには、その「膜」が破れないように生きていくしかない。(でもこの話の登場人物のようにある日ふとしたきっかけで「膜」が破れてしまうこともあるんだろうなぁー)

私が一番印象に残ったのは4番目だけど、読む人の感覚次第で色んな感情が出てくる短編集だと思う。
ただ誰それ構わず勧められる本か? って聞かれると、すっごく迷う本だよね……、これ。

(なんていうか、登場する人物達がなんかもうみんな「ふつう」じゃなくて。でもここで「ふつう」なんて言葉を使うともれなく、「じゃあ普通とは?」っていう議論が巻き起こりそうな、そんな不穏のタネをどこかで待ち望んでいるような気配のする本なので)

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