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1月読了読書感想小説

【ネタバレ有】全員犯人、だけど被害者、しかも探偵/下村敦史【初読感想】

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一時期twitterで見かけることが多かったので、年末年始のおともに手に取ってみた一冊。
私が大の苦手としている時系列トリックが使用されている話なんですよねぇ。
さすがに別の本で何回か読んでいるので、そろそろ「あ。これ、時系列トリックが使われていないか?」と気づけるようになったんですけど(今回も一応話の中盤で気づけた)、今回はそれに加えて再現劇も含まれているので、なかなか真相が見えてない展開でした。

タイトル通り、全員が犯人でしかし被害者でもあって、そして探偵でもあるという話

なんかもう、このタイトルに尽きる。

作品そのままなタイトルなんで、「……まあ、そういう話だよな?」ってなる。
しかもこのタイトルが結構な皮肉なので、読み終わってからの「あ、そっか。そうかぁー……」っていう途方に暮れる気持ち付きなのが面白い。

読み終わった後の、なんとも言えない後味の悪さを考えていくと、どこか現実と地続きの居心地の悪さなんですよね……、これ。

この話における一番の被害者って、読む人の立ち位置によって変わると思う。
私は、偶然と不運が重なった結果謂れのない大悪人の汚名を着せられた志賀川恭一が一番の被害者だと思うんだけど、この彼でさえ現状を逃れるために双子の弟を殺害してるので絶対的な被害者ではない(なので犯人であり被害者)

かといって殺された双子の弟が一番の被害者か? というと、この弟もなかなかにやってることが酷い(双子なのを利用して兄貴に汚名を着せようとしてたり、兄貴を殺して大金をせしめようとしていたり)

なので次点で被害者は志賀川恭一の奥さんと不倫していたからデスゲームに呼ばれた竜胆元也かな? って思うけど、不倫していた事実が「デスゲームに強制参加させられるほどの罪か?」っていうのは、読んでる人の主観になるだろうし。

私は「不倫してたぐらいでデスゲームに参加させられるのはちょっと……」って思ったけど、でももし私が読み始めたぐらいに不倫されてたら違う意見になるだろうし。

誰に感情移入するのか? って考えた時に、自分が肩入れしたい相手を選んでないかな? と思えてきて、でもその人物も罪を犯してるよな……ってなって、堂々巡りしていく。

物語自体には真相があって、結局デスゲームに強制参加させられたメンバーは全員死にましたっていう結末が用意されてるけど、その手前の「じゃあなんでデスゲームを開催することになったのか?」ってなると、登場人物全員がそれぞれに悪意や自己保身や名誉欲で動いた結果、最悪の事態をたぐり寄せてしまったとしかいえない。

エンタメなんでね……、楽しんで読めばいいよなって思うんですけど。
でも同時に、この登場人物達の感情を“エンタメ”として消費していいんだろうか? って思う部分もあって。登場人物達ほどではなくても、人間ってどこかで誰かを加害する犯人になっていて、加害された被害者になって、なおかつそれをジャッジする探偵にもなってるんだろうなぁーと思うと、やっぱりこの本のタイトルってすごく皮肉が効いてると思うんですよ。

なんか、やっぱり、複雑な気持ちになる一冊だったのかな。この本。

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