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【ネタバレ有】禁忌の子/山口未桜【初読感想】

この記事は約11分で読めます。

どうも。
なんというか、すごい本を読んでしまったんですよ……。

この本に対する自分なりにしっくりする落とし所が見つからない。
「あ。こいつら、最低だな」って感じる人物達がいて、そいつらに関しては本気で気持ち悪いぐらいの怒りを感じたんだけど、でもその怒りがラストまで継続するかといえばそうでもなくて、この話の本質は「怒り」ではないのだと思います。

多分本質は「愛情」なんだと思う。

“禁忌の子”って言葉が、この話のすべて。

でもそれは、子供が禁忌ってわけではなくて。
その“禁忌の子”を望んだ親側の業の深さや、愛情の深さや、罪の深さや、いろんな深さがじわじわとまとわりついてきて気持ち悪くなってきて、でも最後には「でも、愛しているんでしょう?」が輝く話。

愛しているって言葉では片付けられない諸々の事情が(法律とか道徳とか)あるけど、でも突き詰めていくと「でも、愛しているんでしょう?」がこの話の根幹にあるのだと思う。

いやぁー……、ジャンル違うけど、「必要だから愛しているんじゃない。愛しているから必要」って言葉がしっくり来るんですよね……。

だって、この話の中で一番酷い目に遭わされた加害者である中川信也が、まさしく“必要だから愛された人間”だったんで。そして必要なくなったから愛されなくなった人間なので。

この「必要だから愛する」って言葉が秘める残忍さと、それを曲がりなりにも親が子供にする気持ち悪さがしんどくて、読み進めながら何度も「この親(中川夫妻)、最低だな……。最低すぎるな……。こんな親がいるんだったら、この世界観にこそ“生を祝う”みたいなシステムが必要なんじゃないの?」となってました。

生を祝うの世界観も結構しんどいものがあるんですが、信也みたいに親のエゴで振り回された子供を見ると、生まれる前に「いいや、この親の元に生まれたくありません。死にます」って言える権利って必要なんでは……? と考えてしまう

実両親以外の受精卵から生まれた子ども達が(作中ではもっと詳しく書いてます)、それぞれの生育環境でどのように育ったのかが語られるシーンでは、素直に「気持ち悪い……」って気持ちしか沸かないんだよ。

親側(中川夫妻)の言い分がグロい。
特に中川奥さんの台詞が気持ち悪い。

「責任、からです。ずっと心のどこかで、うまくいかないのは、信也が滅茶苦茶になっていくのは、自分や夫のせいやのうて、信也のせいだと思っていたんです。信也が、どこの馬の骨とも分からん誰かの子供やからや、って。全部、遺伝子のせいやと納得させてきたんです」(P229)

こいつにそもそも、親になる資格があったのか??

自分の本当の子供じゃないという一点でここまで思える奴が、なんで子供を産んだんだ?

主人公との対比で信也の親である中川夫妻を醜悪に書いてるんだろうけど。
それでも、こいつら(中川夫妻)に親になる資格なんてあったのか?

感想書いてる今思ったんだけど、中川奥さんって子供の事に関してはずっと逃げ続けてるんですよね。
自分達の血の繋がった子供ができないから体外受精に逃げ、その子供を帝王切開で産んだのが理由で後から妊娠した子どもが死んだら子供を虐待する夫から目をそらすことで逃げ……、最後の最後で同じ遺伝子を持つ主人公にこの台詞を言えるグロテスクさも含めて、「この女、なに考えてるんだ? 気持ち悪いな……」って嫌悪感が付きまとう。

遺伝子がすべてっていうなら、体外受精された子ども達はとんでもなくハイスペックな両親を持ってる(少なくとも信也以外は全員医療従事者)んで、読者からすれば「いや、中川夫妻の育て方が悪かったって言えるじゃん……!」ってなるので、ますます気持ち悪い。

しかも中川夫妻が体外受精してまで望んだ子を身勝手な理由で虐待し続けた結果、今回の事件が起こるので……、この夫婦に対しては怒りしか沸かない。

こいつらが信也を愛情深く育てていたら、少なくとも今回の事件は起こってないんだよなぁー……。

この怒りがすごくて、この中川奥さんの語り部分は胸くそ過ぎて、「このままこの怒りが続く終わり方なのかな……」って思っていたんですが、最後にはこの怒りが軽くなるので、この話における読者の感情のコントロールの仕方って上手すぎる

“禁忌の子”がこの世に生を受けるにしても、その子がどんな生き方をするかは、関わっていく親や環境次第。
主人公達はきっと大丈夫だと思うので、読み終わったときに「幸あれ!」と叫びたくなりました。
主人公家族には幸せになってほしい。

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