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【ネタバレ有】生を祝う/李琴峰【感想】

この記事は約8分で読めます。

どうも。
久し振りに心の底から、「あ。この本、結構しんどいぞ?」となる本に出会って、少ししんどくなっています。

しんどい。

ひとまず、これだけはいいたい。
しんどい。
このしんどさは「面白い」でも「面白くない」でもなく、ひたすら、しんどい。

というか、この本、まず「しんどい」が先に来るので、「面白い」「面白くない」の土台に乗らない本だと思う。私自身、この本に対して面白いとも面白くないとも思っていなくて、感じていることは「しんどすぎだろ……」っていうぐったりした感覚なんですよね……。

思えば最近はホラー小説やミステリー小説をメインに読んでいたから、今回のようなヒューマンドラマ?系の本を読むの、久し振りだったんですよね……。

しかし、しんどい。
しんどい、しんどい言ってても感想文にはならないので、この「しんどさ」を解体していく。

世界観がしんどい。

直接命の危機があるわけでもない平和な世界だと思うけど、しんどい。
とてもしんどい。
この本の中の世界に生まれなくて良かったわー、としみじみ思う。

まだこの世界に生まれてもいない胎児に「君、産まれたい?」って聞くのも、しんどいし。(一応コミュニケーションはとれるけど、世界に生まれていない胎児に「産まれたいか?」を聞くのって、高校生で就職するか大学に行くか決断するレベル以上に大変だと思うんだが?)

そこで胎児が「え、嫌ですけど(意訳)」って言ったら、堕胎しなくちゃいけないのもしんどい。
堕胎しないと罪になるし(一応親告罪らしいが)、そもそも胎児の意思確認が可能なのが9ヶ月目なので、あと一ヶ月で出産という段階で堕胎するのがしんどいし、 母胎への影響も気になるし、これを「正しい」としてる世界が無理。

その妊娠9ヶ月で堕胎した胎児の行方もさ、気にならない?
9ヶ月だったらもう人の形をしてるだろうし。
出生拒否して堕胎された胎児をその両親に供養させるとか、やってないよな……??
妊娠9ヶ月まで順調に育っていたのに「産まれたくありません」って言われて堕胎して、その遺体を供養しろって渡されたら、発狂する自信があるんだが……??
病院で供養してるのかな?

いやぁー、やっぱ妊娠9ヶ月目で堕胎するっていうのが、とんでもねぇよ。
そして「堕胎」のことを「キャンセル」ってカジュアルな言葉にすることで軽々しいもののようにしてるのが、更に気持ち悪さに拍車をかけてるんだよ、この世界。もっというなら9ヶ月間も胎児を育てる母胎への配慮が作中でほぼ語られてないのも気になるんだよな、医療技術が進んでるなら人工子宮ぐらい開発して普及させとけよ、ってなるんだが。

もう、しんどい。
ページをめくるのが嫌になるぐらいにしんどい。

で、「私は産まれたいです」って答えて生まれてきたとしても、その先にあるのって「産まれてきたいっていったの、貴方じゃない」っていう社会なのもしんどい。

人間って生きている以上は大変なことも山のようにあると思う。
どうしようもなく八つ当たりしたい時だってあるだろうし。
そんな時に自分以外の誰かに文句を言いたくても、「でも産まれたいと言ったのは貴方だから」って、究極の自己責任論じゃん?

記憶にも残らない胎児の頃の決断で生かされて、その上生きている間ずっと「でも産まれたいと思ったのは貴方(自分)だから」で言われ続ける世界……、しんどくないか?
私だったらもう嫌なんだが。(もしかするとそんな気持ちもくみ取って出生拒否できる可能性もあるので、本の中の世界では自己責任をあんまり深く考えない人間だけが産まれてきているかもだけど)

この本の世界って、幸せなんかな?
それとも、結果的に幸せだって思えるしか産まれてこない世界なのかな。

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