どうも。
というわけで、出版禁止(長江俊和)の感想です。
前作の話がどうしても反則に思えて(時系列を逆に書くってありなのか?!)、悔しかったので他の禁止シリーズを読もうと思った次第。
というわけで、読み終わったんですが。
面白かったです。
今回もいい感じに振り回された……。
けど、前回みたいに「は、反則だ!!!」と思うことはなく、最後のページの余韻も納得だし、結構よかったです。
(そう考えると私の中で「時系列をぐちゃぐちゃにする」っていう行為がいかにいやなのかが伝わってくるから面白いな)
というわけで、感想です。
カリスマドキュメンタリー作家と美人秘書の心中事件は、はたして「心中」だったのか? あるいは偽装だったのか? からはじまる物語……なんだけど、読み進めていくと、めまぐるしく人間関係が変わっていく。
誰かが誰かを恨んでいて。
誰かが誰かを愛していて。
カリスマドキュメンタリー作家の死亡ひとつをとっても、殺人なのか他殺なのか分からない。
最初は謎だらけ。
判明している事柄も信じてはいけないのが、この作者さんのお約束なので、とことん疑いながらページをめくっていく楽しみ。
なのでいろいろ想像をしながら読み進めていくわけですが。
まずは美人秘書の七緒さんが魔性の女で男を狂わせていくのかな? と思ったので、「も、もしかして父親が自殺してるのも(ドキュメンタリー作家も自殺だし)七緒さんが原因?」と身構えたけど、まったく関係なさそうだったし、もしや心中相手をまた探してるのか? 主人公死ぬ?! って思えば、そんなこともなかった。(一部語弊はあるけど)
いやぁー、話の中盤まではこの「七緒さん、ファムファタール説」を推してましたよ……。
父親が自殺したのも「娘」と心中するためで、熊切が死んだのも同じ理由、そして主人公も七緒さんの雰囲気に飲まれて一緒に心中するのかな?!って思ってたんですが、全然そんなことありませんでしたね!(むしろ父親の自殺の原因には言及されてないと思うので、特に大きな理由はなさそう)
すっごく意外だったのは。
最後まで読むと思わず「じゅ、純愛かよ!」と言いたくなるところ。
純愛と狂気は似てる……?
これを純愛と呼ぶのはおかしい?
でも色々あった七緒さんと色々ある主人公が結ばれるのは、「純愛」って言いたいなぁ……、と私は思ったので、この感想文では「純愛かよ!」って書いておきたい。
結局主人公がどうして七緒さんを殺したのに生きてる前提で心中しようとしたのかを考えると、形だけでも心中した熊切と七緒さんに嫉妬して、それ以上の形で自分達の愛を完遂させたくて、そうなってくると心中をするしかなくて、心中は生きている人間同士じゃないとできないから七緒さんが生きてると妄想してたってことなんだと思う。(だからといって猟奇的な行動はどうかと思うが)
本の半分ぐらいから、「……、これって主人公と七緒さんの心中エンドでは……?」と思って読んでたので、おおむね想像していた展開で満足。
……いや、まあ七緒さんは主人公と心中したかったわけではないだろうから(主人公に殺してほしいとは思ってても)、「君をころして俺も死ぬ!」っていう主人公の激情が引き起こした最後なので、どっちかっていうと、「無理心中」のほうがニュアンスとしては正しいのかな……? でも七緒さんも主人公に心を許していたわけだし、「愛」はあったと思うので……。あの世があるなら幸せになってほしいなぁ。
結論、面白かったと思う。
伏線の上で踊らされる身としては、「ワケわからん!」になるし、「いや、熊切と七緒さんは心中なのでは? いや偽装?? え、どっち??」とこんがらがるし、面白い。
気になる部分をメモ用紙を挟みながら読んでたんだけど、読みきったあとでメモを片手に見返すと、「あー。ここの台詞ってここに繋がってるんだ?!」ってなるのも伏線好きとしてはよかった。
最後まで楽しめる一冊でした。
ごちそうさまでした。
(でも七緒さんの遺体を解体してどうこうするシーン、あれって意味が分かると怖い話のオマージュだよね……。いや確かに意味が分かると怖いんだけど、出版物でそれを同じニュアンスでやるんだ……?ってことにびっくり。元ネタがこっちなのかな。まあ今から十年前の本だしな……)
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