前に読んだ「死写会」が思ってたより面白くなかったので、「いやぁー、でも五十嵐さんだよ? リカの作者さんだよ? 面白くないなんてないだろ?」と思って、読み始めた一冊。
すごく分かりやすい因果応報系ホラーだった。
ホラーって自分とはほぼ縁もゆかりもないところから偶然呪われる話と、がっつり因果があって報いを受ける話の2パターンがあると思うんだけど、今回の話は完全に後者。
自分達の保身のために犯罪に手を染めた主人公達が一年後に報復に合うというスラッシャーホラーなので、見ていて理不尽さは感じない。(強いていうなら殺された諸井君の幼馴染み達はとばっちりだけど、それぐらい)
なのでドロドロした印象よりもすっきりとした感じ。
因果応報だからね、仕方ないね。
踏みとどまるチャンスはあったのに、「自分達の将来のために罪を償うチャンスを放棄したんだから、このぐらいの報いはあってもいいだろ」って気持ちになってくる。
というか自分達のために死体(だと思っていた生きてる人)を海に投げ捨てる行為もなかなかに「お前らどうなん?」と突っ込みを入れたくなる行為なんだけど、その後で主人公の美月と赤星が付き合い出す展開は「…………、こいつら……」となるので、読んでる私に一切の同情を与えない加害者側のクズっぷりなんですよね。
冒頭でもう加害者側は最低最悪の人間しかいないと判明してるので、今後どんな死に方をしても一切心を痛めずに見てられる安心感はいい(因果応報系ホラーのいいところはどんな残忍な死に方をしても、「でもそうなったのはこいつらが原因だしなぁー」で済ませられる点だなぁー)
自分達の保身のために死体遺棄に手を貸した主人公達が次々に首を跳ねられ残忍に殺されていくわけだけど、描写が淡々としてるので読みにくさはないし。
誰が主人公達を殺しているのかも中盤ぐらいでなんとなく察しがつくから、サクッと読み進められる。
リカシリーズの時は時々表現がしんどかったけど、今回は軽快に首が飛んでいく割にそこまでしんどくならないので、読みやすい。
まあぶっちゃ美月や赤星たちの保身と言葉の薄っぺらさが最骨頂なので、殺してる側に対する怒りがほとんど沸かなくて、もうなんの気兼ねもなく(殺されていく登場人物達に対する哀悼とか考察とか必要なく)読めるから、血みどろいっぱいのお手軽ホラー小説なんだよなぁー。
ホラーと聞いて想像する“理不尽さ”よりも、「まあ、こいつら、死ぬよな」感が半端ないのは、和風ホラーというより海外のパニックホラーものに近い気がする。
この主人公達の救いようのなさ(冒頭の死体遺棄にはじまり、カップル同士が法要が行われている寺の一室でイチャイチャしだしたりとか、もう作者さんが「こいつらに同情する必要ないよ!」って断言してるとしか思えないレベル)がね、もう仕方ないね。
ただ思うのが。
途中で出てくる33人殺しの逸話がラストのシーンで回収されるとけど、このまま息子を殺された家族が主人公達を皆殺しにするために画策した話で終わってもよかったんでは……?
因習村要素、必要だった?
いや、主人公達が最悪すぎるので、もうこいつらが死ぬ理由なんて気にしないんだけど。
最後にぽっと因習村っぽいシーンが出てきて、「ん? んん?」となったので、蛇足っぽい感じがする。(でも村人全員で主人公達を皆殺しにするなら、それ相応の動機が必要で、その動機を考えると因習村みたいな一致団結する理由が必要だったってことなのかな……?)
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