人類が滅亡するとはどういうことなのかを、考えたくなる小説。
この小説では文字通り、人類は滅亡する。
その人類が滅亡するまでのカウントダウンを、読者の視点で追いかけていくのがこの本の醍醐味。
序盤で死にたがっていた女の子が、ラストまで生き延びたり。
偶然助けられた命が、別の命を育んだり。
三世代にわたって、人類が滅んでいくのを目撃する。
人類が滅亡する未来を明確に描きながら、「じゃあ、人類が滅亡するってどういうことなの?」と繰り返し問われているような気持ちになる。
この「人類が滅亡するってどういうこと?」っていうのが、すごく難しい。
人類、というよりは、人、なのかもしれない。
この話の中では、人類の全滅を前にして、“一部の人類だけでも生き延びさせる派”と“人類は等しく滅んだ方が良い派”の二種類に分かれるんだけど、私は読んでてこのどっちも理解できると思ってしまった。
なんというか、“一部の人類だけでも生き延びさせる派”の、個々の命は過去から受け継がれていたもので、未来に繋げていくものであるっていうのもすっごく分かる。
というか、魂は繋いでいくものだっていう発想がないと、普通に生きていたって「自分は何のために生まれてきたんだろ」ってなるもんね……。
後世に何かを残せたなら自分には価値があったって思うのは、人間のごく自然な発想なのだと思う。
そしてその発想は、とても美しい。
でも一方で、“人類は等しく滅んだ方が良い派“の気持ちも分かる。
どうして自分は死ぬのにあいつは助かるんだよっていう怨嗟とか。
みんな死ぬんだったら安心なのにっていう気持ちとか。
前者のような美しさはないし、正直「人類は等しく滅んだ方がいい。だからお前(他人)も死ね」っていうのは、死の強要なので、やめたほうがいいけど。
自分一人が死ぬ分には、「生き延びるよりも死んだほうがいい。何も残さなくてもいい」って考えはすごく分かる。
そしてそこに今回の話でいうと、結局地球上の人類は滅びてしまったわけですが、滅びた場合、ここに至るまでの彼らの物語は無駄だったと思いますか? っていう疑問符がつく。
そう。
結局、滅ぶじゃん。人類。
最後まで足掻いて、希望を残すけど。
最後の章ではその希望も、最後には潰えたことが判明する。
それでもこの希望を「最後までよくやった」と思うのか、「結局最後はこうなるんだ」となるかは、人それぞれ。
分かりやすいハッピーエンドはない。
まあ、タイトルが「人類滅亡小説」だから仕方ない。
いやぁー……、所詮、人間は死ぬんだよね。
それがこの話の中では、地球の自然環境の激変による大量死だっただけで、放っておいても人間は100年後には死ぬし、100年後に自分の事を覚えている人は皆無かもしれない。
1000年のレベルになると、紫式部レベルの超有名人でもなければ、名前すら覚えてもらえないわけで。
じゃあ、いつかどう足掻いたって死ぬ人類が、未来を残す意味ってなに? ってなる。
うん。まあ、自己満足なのかな。
後は、エゴなのかな。
地球が滅亡する原因やその他諸々の話よりも、この「結局最後には死んで何も残らないのに、それでも未来に何かを残そうとする理由はなんなのか?」っていうのが気になる。
いや。うん。
多分この話のテーマは、「未来を何かに託していく事は素晴らしいこと」なんだと思う。
最後の章を見ても、結局アメリカがずっと宇宙に打ち上げていたカプセルが芽吹いて、新しい人類を違う惑星で誕生させたって話なわけだし。
でもこの美しい最後(未来に何かを託せば報われるというメッセージ)の裏側に、未来に何も託さずにみんなで死んでしまった方が良いと望んだ人達がいるのも、この物語では大切だと思うんですよね。
というわけで、「人類滅亡小説/山田宗樹」の感想でした。
いやぁー、なんか、読む人によって感想がとんでもなく変わりそうな小説だと思います。
その人の人生観が覗けてしまいそうで、怖い作品だな……。
それでは、次の一冊でまた!

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