「一目五先生の孤島」や「地羊鬼の孤独」が面白くて、同じ作者さんの本が読みたいなぁーと思って手に取ってみた一冊。
今回は短編集というか、同じ主人公が登場する4つの短い話が収録されてる本。
ひとつひとつが独立したホラーミステリーだけど、最後まで読んでいくと、「あ、あれってそういう意味だったの?!」となるのが好き。
この作者さんの、幽霊は実在する世界で繰り広げられるミステリーが大好きなんですよねぇー。
一目五先生の孤島の時は、そこまで魅力に感じていなくて。
地羊鬼の孤独で、「お、おう。これはいい感じのホラーミステリだー」ってなって。
今回の「影踏亭の怪談」でがっつりはまった。
めっちゃ面白い。
ホラーとミステリーがいい感じに融合してて、読んでて面白い。
幽霊が存在しないミステリーだったら絶対にトリックがありそうな部分がホラーの薄気味悪さで覆われていて、ホラーかな? と油断していた部分にミステリーのトリックが使われていたりして、“どこまでがホラーで、どこかでがミステリーなのか分からない空気感”が好き。
一目五先生の孤島の時は、このホラーとミステリーの塩梅が分からなくて戸惑ったけど、この作家さん、読めば読むほどなんとなく「あ。ここは多分ホラーだな?」とか「こっちはミステリーで片がつきそう」とか分かってくるので、面白いんだよなぁー。
書き方に独特の癖があるけどその癖に慣れてくると、それも味わい深くなる……、パクチーみたいな作家さんか??
今回の4つめの話で繋がるホラーの元凶みたいな要素は、正直そこまで怖くない。
理由を考えてみたけど、多分今回の話って基本的に「自分から積極的に関わっていかないと踏み抜かない地雷式ホラー」だからかな。
私自身が慎重な人間って事もあって、危ないところや怖いところにわざわざ行って危険な目に合うというのは「自業自得では……?」って気持ちにもなるし、今回の話の主人公に関しては自分から首を突っ込んでいくタイプなので、「怖い」って感想よりも「あの箱を開けなければよかったのに」って気持ちの方が強くなるのかもしれない。
ミステリーのほうも読んでいる人間に解いてもらう系というよりは、物語の中で謎がとける感じなので、そこまでワクワクするものじゃない。
というか、「え? そのトリックできる?」っていうのが多いのと(メロンとか)、読んでる側が結構憶測で推理を組み立てなくちゃいけない部分があるんで、なんか机上の空論めいたものも感じるから物足りない。
ただその「そんなに怖くないホラー」と「そこまでワクワクしないミステリー」が組み合わさった時に、なんか不思議なぐらい面白い化学反応が起こって、「あ。この小説面白い!」ってなるのが、この本の魅力なんですよねぇー。
ホラーとミステリーがいい感じにお互いをカバーしあってるってことなのかな……?
ところどころ中途半端に残されていく謎(ミステリー)が最終的に恐怖(ホラー)に回収されていく様子は面白い。
でもそれでもやっぱり伏線好きとしてそこまで熱狂できなかったのは、どうしてだろ。
面白かったけど、のめり込むほど滅茶苦茶面白かったわけではない。
伏線とかホラーとミステリーの塩梅とか、100点満点で楽しめそうなんだけど、私の中では80点ぐらいの作品。
というわけで、ごちそう様でした。
しかし主人公が今回の話で行方不明になってるんですけど……、まだ続編が2冊あるんですよね。
どうなっていくんだろう、楽しみ。
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