結構長い話だったなぁー。
手に取って分厚さを見て、「うぉ、分厚い……」と思って読み始めたんだけど、ページ数もさることながら話が長い。
というか、着地点が全然見えない。
小説を読んでいるとなんとなく、「こういう展開になるんでは?」と想像するんだけど。
今回の話に関しては、「姫を殺した犯人を特定して終わりかな?」と思っていたのが中盤で犯人が捕まり、「七海ちゃんを殺した犯人が判明して終わりかな?」と思っていたのが終盤で犯人は分かったものの、それで終わるわけでもなく。
じゃあタイトルのオイサメサンと出会っておしまいか? となったら、そうでもなく。
着地点だと思っていた部分をすべて通過して読み終わって、「な、なんか読み終わったー!! って感じがしねぇ……」っていうラストでした。
……この話における一番やべぇ奴が生き残ってるのも理由のひとつだろうか。
この感覚がいいか悪いかは分からない。(個人的にはこの不安定さというか先の見えない感じが面白くて好きなんですが)
主人公が霊に怯えたり、バイト先の同僚の事件現場に遭遇するあたりの序盤のシーンは、結構なホラー小説なんですよね。
じっとりと肌にまとわりついてくる、気持ち悪さをはらんだ空気感が伝わってくるような質感があって、ホラー小説だなぁーという印象。
主人公が霊を見るシーンの描写はすごくて、目の前にそれが本当にいて触れられそうな気持ちにさえなってくる。
けど、要が霊を祓えるようになってから、小説のテイストがホラーからオカルトバトルに変貌する。
この変貌の度合いがすごくて、思わずのけぞりたくなる。
え、こんなにも様変わりする?! という変貌振り。
これまでの霊に怯える無力さや非力さが充満した空気から一転、霊に立ち向かうラノベ風になるというか。
で、「お、これは霊に怯えてた女の子がパートナーを得て霊と戦う話だったのか?!」となると、次に謎の敵対組織が出てきたり。
謎の敵対組織が出てきてからは、「ん?! ん……、え……、これってなんか風呂敷が広くないか?」となってました。
この話、続編あるのかな?
着地点が見えない→要素が多すぎてどこに落ち着くか分からない……、ってことかも?(さすがに謎の敵対組織を倒すところまでは行ってないし、親しい関係になっても性交渉はできない(したら見える≪力≫を失うから)要との関係の甘酸っぱさもないし、どこに向かっているのか分からずにページをめくってましたね)
でも要素は多いけど、とっちらかっているとまでは思わなかったし、ずっと霊の存在に怯えていた主人公が前向きになって立ち向かっていく様子を書いてると考えればそうだし、作者さんの展開運びが上手だからか、矢継ぎ早に事件や出来事が起こってもそこまで置いてけぼりにされないのはありがたい。
文体が読みやすいおかげかな。
読んでいても、話そのものへの混乱はなかった。(話の中に色んな要素が出てくる小説といえば「デートピア」だけど、あっちよりも話がとっちらかっていないのは、読んでいる側が要素を吸収できるぐらいのページ数がこっちにはあるからかも。長い本なのでその分要素が多くても読み込めたのかな)
ラストのなんかしっくりと来ない(ハッピーエンドともバッドエンドともいえない微妙なライン)感じも、人間の日常って毎日そんなもんじゃない? と思うとそうだし、主人公が自分自身の日常に帰って行ったと考えれば、あんな感じなのかな……??
で、本筋の中にちょいちょい挟まれる過去話が怖い。
むしろこっちが本筋では? とふと思うぐらいに、怖い。
隣家の子供に虫(おそらく毒虫)を使ったお菓子をあげたり、義父を殺害する女とか。
小学生の女の子にずっと性的加害を繰り返した挙げ句、見つかったら当てつけのように死ぬ男性教諭とか。
そして主人公が時々見る霊の姿とか。
本筋にほんの少しだけ関係があるけど、なくてもさほど困らないようなエピソードで描かれてる人間が怖い。
この本の怖さって、半分はこの過去話が担保してるんじゃないかな。
……結局のところ、この話って霊が見える女の子の話だけど、突き詰めて考えていくと「一番怖いのは生きている人間」って話なんだろうか……?
というわけで、「オイサメサン/神津凛子」の感想でした。
面白かったけど、素直に「な、長かった……」とも思います。
ごちそう様でした。
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