読んでいる間ずっと、「織賀と祝部の関係について適切な言葉を述べよ」って問題を出されている気分になる本。
とにかく、このふたりの関係がうまく説明できない。
逆にいうと、このふたりの関係をうまく説明できれば、この本の感想文は半分以上成功してるんじゃ……? って思うんですよね。
救った者と救われた者なのか。
あるいは、地獄に引きずり込んだ者と引きずり込まれた者なのか。
縛る者と縛られる者って表現も、合っているような気がするし。
ふたりの表の立場を考えれば、同じ大学の先輩と後輩なわけなんですが……、おいおいそれだけじゃ説明できないだろ、あの空気感! ってなるし。
んー……、めっちゃ複雑。
ただ言えるのは、織賀先輩はともかく、祝部君からすれば「あの日あの瞬間に出会ってしまった運命の人」なんですよね、いい意味でも悪い意味でも。
出会ってしまって、差し伸べられた手を掴んでしまったから、ここから先の人生で祝部の中から織賀先輩が消えることはない。
前回のラストであんな結末になってしまった(【ネタバレ有】死体埋め部の悔恨と青春/斜線堂有紀【初読感想】)けど、織賀先輩が生きていても死んでいても、祝部が織賀先輩と出会う前の彼に戻ることはできない。
死んだルートだったら、死体遺棄ビジネスを引き継ぐし。
生きてるルートでも、前回のラストで助けられなかったことへの赦しをずっと織賀先輩にしつづけるし。
ある意味で祝部にとって、「出会ったら即死亡の初見殺しバッドエンドフラグ」のような存在なのが、織賀先輩。
なので祝部が世間一般的な意味合いで破滅しないためにはそれこそ、織賀先輩と出会わないのが一番なんだけど、この死体埋め部が存在している時点でふたりは出会ってしまっているんだよなぁ。
もう出会ってしまってて、織賀先輩が生きてようが死んでようが祝部の破滅が変わらないのなら、もう一緒にふたり仲良く地獄を歩いた方が幸せじゃない……?? と思ってしまう。
わざわざ一冊の本に、織賀死亡エンドと生存エンドの短編を収録してるあたりがね、なんかこの「もうふたりが幸せそうなら、それでいいんじゃね?」って気持ちにさせられるんですよ。
ふたりの行き着く先はどうあったって、世間的には許されない(死体遺棄ビジネスという犯罪行為)のだから、ひとりよりもふたりのほうがきっと楽しいよ。
このふたりの関係性、好きだなぁー。
というわけで、「死体埋め部の回想と再興/斜線堂有紀」の感想でした。
いやぁー、前回の“死体埋め部の悔恨と青春”のラストがすごかったので、そこからどうやって続編が作られるのか気になってたんですが、大満足の一冊でした。
織賀先輩が死んでようが生きてようが、結局織賀先輩から逃げ出せない祝部君(たぶん本人もなんやかんやで逃げる気がない)がいいな……。
逃げないなら織賀先輩とふたりで穴の底で踊っていられるほうが幸せだよね。
それでは、次の一冊でまた!


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