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ミステリー読書感想小説

【ネタバレ有】どうせ世界は終わるけど/結城 真一郎【初読感想】

この記事は約14分で読めます。

100年後に人類が多分(高確率で)滅びます!

そうなったとき、貴方は一体どうしますか?

……っていう小説なんだけど、登場人物の誰もが、崇高な理念とか役割とか、そういうのではなく、個人的な事情を抱えて、悶々としていたり自暴自棄になっているのが楽しい作品。

この話には、シンゴジラに登場するような、エキスパートは存在しない。
どっちかというと、ゴジラから逃げ惑う立場の人達が出てくる。

人類滅亡っていったら、やっぱ、国家間で頑張りましょう! って話になりそうなのに。
そんな気配がなく(滅びるのが100年後というのもあるけど)、みんな、個人の感情で生きてる。

その中でも、人類のタイムリミットが100年しかないと知って、自暴自棄になるもの。
100年後には人類は滅びる前提で、どうして自分が生まれたのかを考えるもの。

100年後に人類が滅んだとしても、自分達は寿命を謳歌できる。
でも未来に何かを残しても、100年後にすべて消えてしまうなら、その生になんの意味があるのか……? という問いかけ。

とにかくこの本、100年後に人類が滅亡するかもしれない(高確率で)という前提において、みんな個人的に悩んでるのが面白い。

人類滅亡っていう舞台装置の上で、わちゃわちゃしてるのかな? って思うと、そうでもなく。
全員が全員とも、それぞれの立場で思い悩んでいたり、苦しんでいたりするのに、でもよくよく考えていくと、「……いや。それって、個人的な悩みだよな……?」に終始していくんですよねぇ。

そこがいい。
この話にはプロフェッショナルはいない。
人類が滅亡するとき、滅びる人達のほとんどは、この話に登場するような人達なのだと思うし。

そしてその中でも、一番「面白いなぁー」と思ったのが、100年後に人類が滅ぶから人を殺してもいいという理屈に囚われた男に、家族を殺された男の話。

100年後に人類が等しく滅ぶという前提の世界で、この男の物語のインパクトが特に大きいんですよ。

人類規模で世界が終わる話ではなくて、個人単位で世界が終わってしまった話なんだよね。

100年後に人類は滅ぶ。高確率で。
じゃあもう、人類が滅ぶんなら、その前に誰かの命を奪っても同じではないか? という問いかけ。
この問いかけで私には真っ当に見えて、「そうだよね……。人類がどうせ滅ぶなら、別にいいよね」って思ったりもするんだけど。

誰かの命を奪ったとき、その人を大事に思う誰かの世界も滅ぼしてしまうかもしれないよ。

このカウンターがエグい。

“人類が100年後に滅ぶ”という世界で、“家族が殺されたことによって人類が滅ぶ前に、自分の世界が滅んでしまった(生きる価値がきえてしまった)”男。
この「物理的に人類が滅びる前に、人ひとりの世界を壊す方法なんて簡単」っていうのが、すごく好き。

人類滅亡っていう、とんでもなく重たいテーマの中に。
ぽんっと、同じぐらいの重たさを秘めた「個人の世界が終わってしまう」が放り込まれる。
この混沌、すげぇーです。

人類が一斉に滅ぶとして。
それは悲しい事で絶望的なことで、ついついそっちに意識が向くけど。
でも、いま私達が暮らしている世界にだって、滅びはあって。
人類が一斉に死ぬような滅びではないけど、でも「人ひとりの大切な世界を更地にするぐらいの圧倒的暴力」は、どこにでも存在してるんですよね。

人類が滅ぶ(100年後に)小説なのに、なんかそれ以前に、「その人類はひとりひとりの人間の集合体で、その人間達の“世界”はそれぞれにあるんだよ」って言われている。

これがすごい。
人類滅亡を語ってるのに、それぞれの個人の話になってるのが凄すぎる。

というわけで、「どうせ世界は終わるけど/結城 真一郎」の感想でした。

めっちゃ、好み!
前に読んだ人類滅亡小説とは趣が違う(あっちはどっちかというと、滅び行く世界でも種を残したい人類への賛歌だった)けど、こっちは「人類とは結局、ひとりひとりの人間の集合体」って感じがして好き。

結局この話では、人類が滅ぶのか人類が助かるのかは分からないけど。
でも多分、それはそんなに大事な要素ではないんだと思う。(何故かというと、人類が100年後に滅ぶとしても、その前にひとりの人間の世界はふとしたきっかけで滅ぶから)

それでは、次の一冊でまた!

花邑がオススメする、次の一冊!

作中でも紹介した、人類滅亡までの軌跡を描いた小説。
こっちは「種の存続とはどういうことか?」「命を繋ぐとは?」が描かれた壮大な物語になります!

なんとなく「どうせ世界は終わるけど」に似た雰囲気の小説だなぁーと思っています。
種の存続やエキスパートの話というよりは個々人の物語。
伊坂幸太郎さんらしい軽いタッチで描かれる終末世界をどうぞ。

実際の根拠ある医学よりも、スピリチュアルが台頭した世界の物語。
漠然と、「あ。この世界滅ぶわ。きっと」という気持ちになる、なんとも後味の悪く居心地が悪い小説です。

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