twitterで読了ツイートを見ましたシリーズ。
和風吸血鬼ものだと聞いたので、ワクワクしながら手に取った一冊です。
……結局、和風吸血鬼ものではなかったような……?
タイトルの「愚かな薔薇」も、そこまで「愚かな薔薇」をしてなかったような……?
吸血鬼を連想させるシーンはあったけど、そこまで吸血鬼ものではなく、どっちかというとSFチックな雰囲気。
そして読み終わった今でも、理解が追いついていない。
ここに来てこの間読んだ小説の「ただ読むだけじゃ駄目なのか?」が脳裏をよぎる。
私は読み終わった本は感想を書いてるけど、感想を書く行為のために無理に感想を頭の中からひねり出しているのではないか。本当はなにも考えてなくて読み終わっているのに、それなりに読み終わった成果としての感想文を書くために、苦心しているではないか。
……ということを、色々考えてしまうぐらいには、今回の本は難しい。
感想を書くのが難しい。
難解というか、ややこしいっていうか、どういう軸で読んだらいいのか分からなかったというか。
読み終わって心に何も残らなかったの? となると、全然そうじゃないんだけど。
なんていうか、理解が追い付いていない。
この物語の背景に横たわっている設定が壮大すぎて、正直全体像を自分がちゃんと把握して読み終わっているのかが全くわからない。
600ページあったけど、なんかこうしっくりと、「こういうことなんだな?!」と思うものがない。
ようするに遠い未来に地球が太陽に飲まれてしまうから、それまでに人類を別の星に移住させようとする計画があって、その一端として開かれているキャンプに集った少年少女の話なんだよな……?
ただ切実な人類の生存問題なので資金はめっちゃ出るし、なので当たり前のように利権に群がってくる大人たちもいるという、少年少女の恋愛や成長を描きながら、大人達の醜い部分も描かれている本なんだわ。
その落差というか、主人公の奈智ちゃんの心に揺れ動きを眺めつつ、その間に挟み込まれる大人達の下世話な話が生々しい。
特に作中で行われる≪血切り≫が性行為をイメージするものだから尚更、理由こそあれど未成年の女の子にさせようとする大人達の醜悪さが目立つし(いやぁ、あれはもう売春とかそういう類いの雰囲気なんですよね。大金を積んで、自分の私利私欲のために子供を犠牲にするっていう、現代社会でも行われている醜い大人の姿なんだわ)、一方で終盤でようやく≪血切り≫に踏み切った奈智ちゃんと深志の様子は、同じ行為であっても大人のそれとは全く違う初々しさと微笑ましさがあるんだよなぁー。
思わず奈智ちゃんと深志が結ばれた(?)時は、「エンダーーーーー!!!」って叫びたくなりました。はい。
なので設定の壮大さとか、和風吸血鬼という触れ込みのわりに吸血鬼っぽい印象が薄いので(血を吸うって行為が作中で出てくるぐらい?)、読み終わった後もあんまり理解が追い付いていない一冊なんですが、奈智さんが子供から大人の女性に変わっていく物語だと思えば、「……そういうもん?」という気持ちです。
一方で心のどこかで「これ……、深志、死なんよな?」と警戒してたので、死ななくて良かった。
正直奈智さんの両親の話が出てきた直後から、「これって深志が城田弟に殺されて、奈智ちゃんが深志の意識を抱えて宇宙に飛び立っちゃうエンドなのでは……?」と思ってたので、違う終わり方になって良かった。
でも600ページも追いかけてきて、壮大な設定もあるのに、感じたのが「エンダー!!!」っていうのは……、私の感受性大丈夫か? ともなる。
もっと深いテーマがあるのかもしれないけど、私には分からない。
設定がかなり重たいのでもっと感じ取れるものもあるのかもしれないけど。
今回はしみじみ、「ただ小説を読むだけじゃ駄目なのか?」を思い出してました。
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