濱地健三郎シリーズの第二弾!
さすがは有栖川有栖の作品といいますか、読みやすい文体でさくさく読める小説。
最初の頃は「有栖川有栖といえば本格ミステリーの人だけど、これ、本格ミステリーじゃないよな……?」ってひねくれていたんですけど、第二弾ともなれば読んでる私の心の持ちようも変わるといいますか。
有栖川有栖の心霊ミステリー、面白い。
引き出しが多いなぁー、この作家さん。
今回の濱地探偵シリーズも、霊が見える濱地探偵と助手のユリエさんが幽霊が関わる事件(事故?)を解決していく短編集で割合的にはオカルト8割ミステリ-2割。
前回の1作品目はミステリー5割ぐらいで「ミステリーを下地にしたオカルト小説かな?」っていう印象だったけど、今回はオカルトがメインの短編集。
濱地探偵のいる世界で心霊(幽霊や怪奇現象)がどのように発生するかをじんわりと味わえる一冊でした。
ただ心霊がそこにあるっていうよりも、しっかりとした実体がある。
そして心霊の状態によって、読んでいる私から見える景色がまったく違う。
特に「ミステリー研究会の幽霊」と「それは叫ぶ」が続けて収録されているのが、この濱地探偵シリーズの面白さを現していると思うんですよねぇー……。
このふたつ、結構正反対なホラー要素を含んだ話だと思う。
ミステリー研究会の幽霊に出てくる幽霊の感情は、同年代の人間達が通う空間で“自分のものだった何かが奪われる怖さ”が伝わってきて、「そうだよね。幽霊でも悲しいよね……」と読んでいて寄り添える。
学校の怪談って理不尽系よりはこんな感じで一定の納得ができる(ジュブナイルホラーっていうのかな?)ものが多くて、懐かしい。
人間の延長線上の幽霊として伝わってくる。
一方でそれは叫ぶは、人間の通り魔ならぬ心霊の通り魔。
ホラー小説でいえば、「偶然その場所を通りかかっただけで呪われた」系の理不尽系、読んでてゾクゾクする感じ。人間らしさなんて皆無、というか人間の嫌らしい負の部分を煮詰めたものが路上に転がってて、たまたまそれに触れた人間を呪い殺そうとするっていう話。
このめっちゃ理不尽で不条理な雰囲気が、もうオカルトとして最高。
このふたつのエピソード、やりようによっては別々に一冊ずつ出せたんでは……?
それを短編にして一冊の本にするんだから、濱地探偵シリーズって奥が深いなぁー……。
ミステリーとオカルトの引き出しが多すぎて、読んでいて「次はどんな短編が読めるんだろう?」ってずっとワクワクできる。
そして読んでいって、「え! こういう展開もありなん?!」と驚かされる。
楽しい。
というわけで、今回は「濱地健三郎の幽たる事件簿」の感想でした。
今回も面白かったです!
ごちそう様でした!
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