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読書感想小説

【ネタバレ有】コミケへの聖歌/カスガ【初読感想】

この記事は約7分で読めます。

ポップなタイトルと表紙を見て、「これってどういう話なんだ……?」となった本。
一度目はなんとなく私向けではないような気がして見送ったんだけど、その後でtwitterで「案外重たい内容」と聞いて興味が沸いたので、手に取ってみました。

……案外重たい、じゃなくて、結構重たいな?!

正直タイトルに「コミケ」とあるけど、コミケの話ではない。
最後にコミケに行くことになるけど、あんまりコミケは関係ない。
どっちかといえばどうしようもない現実から抜け出したい(けど抜け出せない事も理解している)女の子達4人の物語といったところ。

創作の話も出てくるけど中盤になってからは創作要素はほとんどなくて、4人が生きるコミニュティの中で4人がどうやって生きていくのか、どんな役割が期待されているのか、その中で何を諦めて何を受け入れて生きていくのかを丁寧にゆっくりと教え込まされていくような感じ。
そこに表紙のようなポップな感じも華やかさもない。
地続きの延々とした日常(コミュニティを維持するために必要とされているもの)があるだけ。
タイトルや表紙の雰囲気を期待して読んだら、「なんじゃこりゃあ!!」と投げ出しそうな陰鬱で暗く、そして4人の女の子達だけではどうしようもない現実(大人でも解決できない)が横たわっていて、それを前に蹲るしかないような話。

絶望だったらいいんだけど。
たぶんこの話は、「絶望」ですらない。
一応「こうすれば生きていけるよ」って道筋があって、誰もがそれを理解していて、でもその道筋以外の道を歩きたくて足掻いている。

救いが、ないんだよなぁー……。

作中に出てくる「創作」が救いのようにも見えるけど、でもその「創作」は「遠い場所に「コミケ」がある」って幻想を女の子達に植え付けるし。
その植え付けられた幻想は女の子達にコミュニティからの脱却を唆すわけだけど、文明がほぼ崩壊してかろうじて残っている前時代の遺物で生活を成り立たせているようなこの世界で、女の子達がコミュニティから出て行くことは「死」に等しい。
下手すると「創作」はこの本の時代においては、女の子達の寿命を縮めるためだけのモノかもしれない。

生きる事に重きを置くならコミュニティで役割を果たしたほうが確実だし、わざわざコミュニティの外に出て行く必要性を考えると、「あー……。これってこの子達にとっては自分に課せられた役割からの逃避だったり自殺だったりするのかな」と思えてくる。

いや、4人の女の子達は自殺しようとなんてこれっぽっちも思ってないと思うんだけど。
でも私にはそう見えるんだよなぁ……。

というわけで、「コミケへの聖歌/カスガ」の感想でした。

重たい話と聞いて読んだら思っていた以上に重たくて逃げ場のない話だった……。
ごちそう様でした。

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