タイトルが斬新だったのと、twitterで話題になっていたので読んでみました。
正直言うと、そこまで好みではない。
んー。途中までは好みだったかも。
少なくとも、“探偵の性別が実は違っていた”とか“昔に起こった事件の犯人を自供させるために用意した舞台だった”とか、私好みの伏線もあったんですよ。
でも、読み終わってみると、あんま心に残らない。
こうして感想を書くにあたって思い出そうとしてみるけど、「めっちゃ面白かったなぁー!!」って気持ちにはならない。なので、私にとってはあまり心の残らない本でした。
理由を考えてみたんだけど、一番引っかかったのがトリック。
トリックに医学知識が使われるのはいいんだけど、残念ながら私には全く分からない。
まあ、私医者でもなければ医療従事者でもないので、血糖値の上がり下がりとか生理反応とか言われてもわからないわけですよ。でも、作中では当たり前のようにその話をしてて、「だからこの遺体は自然死なんだ!」とかっていう話になるんですけど、読んでる側は医学のド素人なので「あ、そ、そうなんだ……??」ってなる。
この時点で感じる、漠然とした不親切設計。
なんとも言えないモヤモヤ感。
きっとミステリーだからこのあたりの医学知識にトリックのヒントがあるのかなって思ってても、なんか医学知識で煙に巻かれたような気持ちになるし、「ま、まあよく分からないけど、そういう事なんだね?!」って割り切るしかない。
この本、なんか“割り切って読んでいく”って行為が多い気がするんですよね……。
もしくは「まあこういうもんなんだろ」って納得して読んでいくというか。
作中で一般人である登場人物が検視を見たがるシーンも、読者側の一般常識から見ると「え? 遺体の検視を見るの? 悪趣味じゃない??」ってなるんだけど、でも本の中の世界ではそういうものなのかなと思うわけで。
この検視に関しては本の終盤で「そんな訳あるかい。不自然だろう」って突っ込まれてたんですが、いやいや読者はこの本の世界の初心者なんだからこの本の理屈分かりませんからね?! 検視を見るのに抵抗のない世界だって思ってたのに、いきなり本の側から否定されたら「え? そうだったの?!」ってなりますからね。
この“検視をみんなで見学する”っていうのが、後々の“実は犯人を自供させるための舞台でした”に繋がるんだけど、釈然としない。
なんというか、この読んでる側のリズムを狂わせる作風(一般的に分からない医学知識をトリックに使ったり、常識みたいに書かれている事が実は非常識だったり)がこの作者さんの魅力なのかもしれないけど、これはもう「この作者さんはこういう書き方をする人」って知ってないと、気持ち的にはだまし討ちを喰らったような気分になるんだよな……。
うん。私、伏線好きなんですよ。
でもこの本の伏線があまり好きではない理由は、おそらくその伏線の張り方に公平さを感じないからだと思う。
というわけで、「どうせそろそろ死ぬんだし/香坂鮪」の感想でした。
まあ、初めて読む作者さんだし、タイトルが気になって読んだ本なので、しかたないかな。
もし2作目を読む機会があれば、今回のことを肝に銘じてこの本の中の“常識”を疑いながら読もうと思います。
それでは、次の一冊でまた!


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