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ホラー読書感想小説

【ネタバレ有】羊殺しの巫女たち/杉井 光【初読感想】

この記事は約8分で読めます。

これは、人間の少女に惚れてしまった神様の話。

ただそれが判明するのは、最後まで読み切った後なので。
1周目は、誰が“おひつじ様”になりすましているのかを推理していくんだけど、その点は案外、中盤ぐらいで察しがつく。

いやぁー……、おひつじ様への目印が、葉っぱで作った「羊」の文字だとしたら。
登場人物の、しかも語り手の名前が「祥子」の時点で察しがつくんですよね……。
序盤に身元不明の外から来た女性の死体があがってるし、「あ。これ、祥子ちゃんが殺されてるやつだ。ご両親を呼びたくないのも、多分成り代わりがばれるのを恐れてるんだ」って連想ゲームできるし。

ただ成り代わりは分かってても、作中に散りばめられた伏線までは気づかなかった……。
人数が増えてるとか、過去の語り手は祥子に成り代わっていないから、あくまで祥子達を別の角度から見てるとか。
その別の角度から見てるっていうのが、すっごく自然で、なので違和感がまったくないんだけど。

1周目を終えて、2周目を読み始めると、気づく。

主人公、お前……。めっちゃ祥子に成り代わりたがってるやん……!

言葉の端々から伝わる、祥子に対する嫉妬。
そして伊知華ちゃんへの憧れ。

いや、ぶっちゃけ。
主人公の伊知華への憧れって、もはや恋慕とかそこらへんの域に達してて、私には主人公(おひつじ様)が伊知華を含む巫女達のことを好きになってしまったから、「殺されてもいいか(私が彼女たちを殺して生き長らえるなら、殺してもらったほうがいいな)」っていう感情で、死を受け入れたように見えた。

ぶっちゃけ、愛なのでは?

……いやぁー、そう考えると、巫女達のなかで唯一序盤に主人公に殺されてしまった本物の祥子ちゃんの存在が気の毒すぎるんだけど、この子は伊知華の側にいつづけた(主人公にとって嫉妬の的だった)のと、伊知華を守れなかったのが原因だと思う。

でもこの話、ひとつ思うのは。

今の時代だと、赤子を生け贄に差し出して厄災を退けるって、悪以外の何物でもないけど。
この風習が出来ただろう古い時代だと、赤子が産まれてもちゃんと育つかは分からないし、赤子を差し出さなければ、もっと村人が食われるし、育つか分からない赤子を差し出せば村が繁栄するので、一石二鳥だったんだろうな……。

そしてなんやかんだで巫女たちが村の儀式を穢したのは、自分達が好きだったお姉さんが死んだからっていう、凄く強烈だけど個人的な動機で。

“おひつじ様”が巫女達に惚れて、死を受け入れてくれたからよかったけど、これ、もし“おひつじ様”がそこまで巫女達のことを好きになってなくて、巫女達を殺していたとしたら、この年の村はどうなってたんだろ。

下手すると、それこそ儀式がはじまる前の村みたいに人がいっぱい死ぬ事態もありえたわけで、一概に「巫女達の勇気すげぇなー!!」にならない、なんか苦い気持ちを感じる。

というわけで、「羊殺しの巫女たち/杉井 光」の感想でした。
これは一回読み終わった後で、実は“おひつじ様”だった語り手の心情を噛みしめながら、2周目を読みたい作品だと思う。
あんまり同じ本を何度も読みたいとは思わないんだけど、この本は読もうかな……。

それでは、次の一冊でまた!

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