小説の感想って、真摯に向き合わないと駄目だなぁー……。
と、まざまざと思いつつ、いやいや、でもでもこの話の場合、あえて突っ込み所を残しておくことで、それを見つけて批評する読者を殺していくってパターンもあるから、一概に真摯であること=殺されないってわけじゃないのも、辛い。
結論、作者が自分の作品を貶してくる読者を殺しに行く小説。
しかも「俺の作品を貶すんじゃねぇ」じゃなくて、「あ。貶しましたね? ちょうどいいや。貴方は選ばれました」みたいな感じなので、ますます怖い。
普段、感想を書いてる人間には背筋が凍るような作品でした……。
この話ほど極端じゃなくても、人様の作品の感想を書くときは気をつけた方がいいなぁー……とか。
でも、プラスの感想ばっかりっていうのも嫌だよなぁー……とか。
私にとっては、この澤村さんという作家さんは、よくも悪くも相性がばっちりいい時(比嘉姉妹シリーズとか)と悪い時との差が激しいので、読みながら「今回はどっちかなぁー」と思って読んでるんだけど、今回はかなり当たりだった。
というか、この本を読んだ後だと、安易に本の悪口書けないね……。
それぐらい、すっごい怖い。
本の悪口言ったら殺されるってさ、なんか防げそうで防げないギリギリのラインというか。
自分の落ち度がありそうでない、絶妙なバランスっていうか。
この「なんか防げそうだけど、無理かも」っていう、いつどこかで自分が巻き込まれるかも知れない恐怖って……、読んでると生活に支障が出そうで嫌ですよね。
いや、感想文に悪口書くの怖いなって思う分には、めっちゃ自分の心の中に突き刺さってるけど!
で。澤村さんが書く、嫌な人間というものをひしひしと感じるわけですよ。
タイトルにもなってる霧香さんについては、「……もしや、そういうことでは?」というのが大当たりしていて。
霧香さんの正体が分かってからが真骨頂だったけど、「タイトルにもなってるんだけど、この霧香って人がヤバいんだろ……?」と思ってたら、そんなこともなく、ヤバイのは主人公の香川さんだったり。
読んでいて、「いやぁー。澤村さんのことだし、絶対に主人公の香川さんにも何かあるよな。副島君みたいないかにもヤバイ感じの男をお出ししつつも、やっぱヤバいのは主人公だよな。多分」って思ってたら、想像の斜め上を行くヤバさだったので、そろそろ私も澤村さんワールドの住人ってことでいいかもしれない。
副島君はねぇ……、この人は、なんというか。
澤村さんの作品って、悪夢に出てくる殺人事件を起こした人みたいに、なんか「あぁ……、こいつ嫌だ……」って思う人間の表現に躊躇がないんだけど、本当に嫌な奴というか、こういう奴いるよねって雰囲気の奴がすごくて。
副島君も、あれは香川さんのことを褒めているようで、露骨に「俺は異常者じゃないから、普通に幸せな人間だから、作家にはなれないんだ(=作家になる奴はみんな異常者なんだ。そうでなくちゃいけないんだ。でないと俺が作家になれないのはおかしい)」って言ってるから、この見下す感じが、この世界のどこかにいそう。
自分がなれなかったものになれた誰かをこき下ろすことで、自分はそれよりも上だと満足したい類いの人種。
その副島君が殺されるのは、まあ、「うん。まあ……、これ、ホラー小説だもんなぁー」って感じだったけど、ここから一気に(霧香さんの正体も含めて)盛り上がってくるから、面白かったー!
読んでる時はまったく気づかなかったけど、この作品はフェイクホラーっていうらしい。
最近のモキュメンタリーブームは正直あんまり好きじゃないんだけど(小説の形をなしていない資料をかき集めたような設定資料集を本にして、「皆さんで考察してね」されるのって、嫌いなので)、この本みたいに全編物語になっていて、どこからが現実でどこからが想像なのかが分からない雰囲気は好き。
かなり好みです。
でも怖いよー……。当面、ちょっと気に入らない程度の小説だったら、普通に褒めちぎってしまいそうなぐらい怖かったですよぉ……。
というわけで、「恐怖小説 キリカ/澤村伊智」の感想でした。
それでは、次の一冊でまた!
花邑がオススメする、次の一冊!
忖度なしに澤村さんのホラー作品の中でめっちゃ好きな一冊!
ホラー小説が好きなら、こっちもオススメしたい!
生きてる人間が一番怖い系小説です!


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