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ミステリー読書感想小説

【ネタバレ有】正しい世界の壊しかた:最果ての果ての殺人/彩藤アザミ【初読感想】

この記事は約11分で読めます。

世界観そのものがトリック!

いやぁー、読み始めて最初「ん? この本の世界観ってどうなってるの?」ってなったんですよね。
現代日本っぽくない名前の登場人物ばかりで。
神様がいて。
女性同士でも子供が産まれて。
指環をなにもないところから取り出して見せたり。
牧歌的だけど、違和感があちこちに散りばめられていて。
明るい雰囲気だけど、作品の根底から漂ってくるのは「コミケへの聖歌」に似ている。
ふとした時に気づく違和感。
時々登場する、読者側の文明の話。
作中の主人公は徐々に勘づいていくけど、読んでいる私からすると「ん? もしかして、これって現実の話なのか? この村の外の世界って滅んでない?」っていう感覚がずっと続く。
それで色々と考えるんだけど、世界観というか、世界のトリックが半端ない。

いやぁー、まさか、世界が300年前に滅んでいたなんてね!

序盤にある“女性同士でも子供が産まれる”っていう現象を真に受けて、「この世界は、パソコンの中にあるシミュレーション世界なのでは?」と思ってたんですが、実のところは300年後の地球。
神様みたいな事ができる“宇宙生命体”によって人類が淘汰された後の地球だったとは……、いや、全然気づかなかったよ……。(実のところ、虹色の雲みたいな発言があった時点で「これ、クトゥルフ神話の話じゃないよな?」と疑っていたんですが……、この本に出てくる神様は普通に人類ではどうすることもできない“宇宙生命体”っぽい)
女性同士でも子供が産めるっていうのが実は、「性の教育水準が低いので、真実に主人公が気づけない」って伏線だったとは思わないじゃん……?
指環を取り出すのが手品なんだろうなとは思ったけど、女性同士での出産が「片方が村の中で血が遠い男とセックスをして妊娠する」とは思わないやん……?(それを子供達には同性同士でも子供が作れると思い込ませてるんだから、すごいよねこの場合赤ちゃんが男性に似たり男性同士の場合はどうなるのかすごく気になるけど

そしてコミケへの聖歌と違うのは、こっちの話だとまだ人類に救いがあるってことかな。
コミケのほうはじりじり人類が追い詰められていく話だったけど、こっちはまだ救いがある。
まあこっちの“救い”も、「おめでとう。君達は選ばれました。よって他の人類が死に絶えた土地をあげるね!」って感じなので、あんまり嬉しくないんだけど。
作中で主人公が飼育していた蟻達を全部逃がすシーンと、ラストのシーンの類似が怖いんだよなぁー。(今まで箱の中で大事に飼育していたのを解放するのって、ようは解放後は自己責任だと見放すようなもので、蟻に自我があれば「ふざけるなよ。今まで管理しておいて」ってなるし)

ここから先は君達次第だよと言いながらも、その実は滅んだ世界(しかも土地は塩害にやられてる)に放り出された人類に生き残る術はあるのか? という話。

ミステリーかと言われると、最近よく見かける特殊設定ミステリーという奴だと思うんですが面白かったです。

というわけで、「正しい世界の壊しかた:最果ての果ての殺人/彩藤アザミ」の感想でした。
しかしこの本のタイトルである「正しい世界の壊しかた」って、地球を一部の人類だけを残して更地にした“宇宙生命体”の事を指してるようにも聞こえるし。
別の角度から見ると、嘘をつき続けて村の存続をはかろうとした犯人に対して主人公が真実を突きつけたことを指してるようにも感じるし、絶妙なバランスのタイトルだなぁー。

それでは、次の一冊でまた!

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