どうも。
というわけで、あさとほ(新名智)の感想です。
なんというか、ぐあんぐあんと現実を常に揺さぶられてるような話だった……。
がっつりホラーではない。
ミステリー……、でもないよね……?
私があげられるジャンルの中で、「あけとほってこういうジャンルなんだよね!」というのが思い浮かばない(架空伝奇もの?っていうのかな、強いていうなら)。
人が無意識に思ってる「こうなればいいのに」という願望にスポットを当てたような、ほんのり薄暗くて怖い話……、ってところなんだろうか?
小説を読むときでも無意識に「これがこの小説の現実か」って思いながら読んでいるところがあって。
たとえば、現代ものだったら「この世界ではスマホがあって電車があって……」とか、ファンタジーだったら「あ。この世界には龍がいるんだ?」とか。
そういうその物語の中での現実を無意識に確認しながら読んでるんだけど、この“あさとほ”に関しては、それがない。
現実が入れ替わって、認識が入れ替わって、「あれ? いまどっちを向いてるんだろう?」ってなりながら読み進めて、なんとなく方向性を見つけられたと思ったら、そっちも違ってて……、みたいな、現実がどんどん変わっていく感じ。
この振り回される感じが混乱するけど面白いし、ずるずると引きずり込まれていく感覚。
話の冒頭で「妹」の話が出てくるから、「主人公には妹がいるんだ?」と思って読んでいたのに、話の途中から実は妹はいなかったっていう認識になっていくし。
かとおもえば、実はいないのは「姉」のほうで「妹」が実は主人公でした! という展開になるし。
じゃあ、その「妹」がなぜ「姉」を作り出したのかと言えば、初恋の相手が関係して……、と、現状がアップデートされていくたびに、物語がどんどん変わっていく。
そのアップデートの中に、ちらちらと出てくる「あさとほ」の存在。
じゃあ、その「あさとほ」ってなんだよ? ってなると、それはそれで謎が多くてどんどん訳が分からなくなってく。
この変わり様がシームレスで、読んでいる側が「え? いま現実が変わったの? まじ?」となる鮮やかさで、読んでいてストレスがないし、面白いし、この作者の文章力(というか物語の構成力? 説得力っていうの?)ってなんなんだよ……、とびっくりするんですよねぇ……。
このね、「姉妹のどっちが現実に存在するのか?」っていう部分(この話の根幹の一つ)だけとってもすっごく面白い。
姉が妹を否定する理由も、姉妹にとってもう片方が必要だった理由も分かるし。
それでいて話が絡み合ってるので最初は訳が分からないし、最後まで読み進めると、姉妹がそうしなくちゃいけなった理由が分かってくるし、ありきたりといえばありきたりな絶望があって、その絶望を乗り越える方法として“自分が思い描く幻を共有できる装置があったとしたら?”が絶妙にマッチしてて、読んでて面白い。
そして絡み合った糸が綺麗にほぐれて一本の糸になった瞬間がね、……最高だね。
伏線って気づいたときが最高に面白いんだけど、この本に関しては伏線がいっぱいで楽しすぎる。
最後にはその装置の影響下を離れて主人公達は生きていくわけだけど、なんというか、幸せになってほしいな……って思う。(装置の影響下にあればハッピーエンドは確約されたものだったかもしれないけど、でも装置がなくなってハッピーエンドになれる人達はなれるし、このふたりはそういうものなんじゃないかなって思う)
というか、前作の「虚魚」で主人公の側にいた男性がまあ色々だったので警戒してたんですが、今作の明人君は変人っぽいけど真っ当な子でよかった……。
というわけで、ごちそう様でした。
面白かったです!
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