どうも。
というわけで、虚魚(新名悟)の感想です。
#読了
— ハルノラッカ (@huhahaha_zikaki) September 25, 2024
虚魚・新名智
ホラーというよりミステリーと日常、日常が狂っても日常にいるしかない人達の折り合いの話…、とおもったらやっぱりホラー。この物語の振れ幅と文章の読みやすさと、時々挟まれる他愛ない言葉が好き。
……って書いてるとふんわり系に聞こえるけど、ミステリーホラーです。 pic.twitter.com/4AEiJYGwZe
家族から「この本、面白いらしいよー」と勧められて読了。
なのでよくよく考えれば、私が普段滅多に読まない女性の語り手の話……、なんですよね。
めっちゃ、面白かったです。
面白いって言葉がこの作品に合うのか分からないけど、面白い。
一番思うのは、文章が好き。
頭に引っかからずにすらすらと読めるので、ストレスがない。
それでいて登場人物達の掛け合いが絶妙(普段の生活での会話ってこんな感じだよなぁー、っていう生きてる人の会話)で、読むのが楽しい。
特にこの話の肝ともいえる「釣りあげたら人が死ぬ魚」について、「もし鮭だったら(なんかの条例の関係で)持ち帰れないな」って書いてるところとか、「いや、心配するところ、そこ?!」な少しピントのずれた言葉がいい感じに混じってるのが読んでて面白い。
で、文章も楽しくて、物語も楽しい。
……いや、人を殺せる怪談を探すってなんだよ……。
もうまず、「人を殺せる怪談」って言葉がいいよね。
そのまんまの意味だけど、すごくインパクトがある。
で。
“この「人を殺せる怪談」を探す”っていうのがいいんだ。
怪談って色々あるし、中には人が死んでる怪談もいっぱいあるし、中には「実際にやってみると本当に人が死ぬ怪談」もあるかもしれない。(というか現在進行形で見聞きする怪談の中にも「知ったら、呪われる話」っていうのは普通に存在してるから、まあ存在してるよね)
で、その「人を殺せる怪談」を主人公が探す理由は、「誰かを殺すため」。
でも、じゃあなんで「人を殺せる怪談」で「誰かを殺そうと思ったのか?」っていうのが、この話の好きなところなんですよね……。
だって、本当に人を殺したいなら、「怪談」なんて不要じゃん?
誰かを殺したいなら、包丁のほうが確実だし。
何故あえて不確実な方法で人を殺そうと思ってるのか? ってなった時に生まれる、登場人物達の色んな感情が、読んでてじわじわと心に来る。
実際に行動を起こさないにしても、動かないと自分が死んでしまいそうな瞬間がある。
その瞬間を何度も味わった主人公だからこそ選んだ方法が、「人を殺せる怪談を探す」だったんだと思う。
書いてて思ったけど、「人を殺せる怪談」を探して「人を殺そうと思う理由」って、主人公の場合は多分時間稼ぎだったんだろうな……。(いや、まじで私の勝手な想像なんですが!)
どうしようもない不運に見舞われて、その元凶を殺してやりたくて、でも「自分の手で直接殺す」という選択肢までは選べなくて、でも「このまま何もせずに生きていく」事ができなくて、「復讐するために生きている」という名目を作るための時間稼ぎとして、あえて遠回りな殺害方法(しかも不確実)を選んだんじゃないだろうか。
なんというか、こういう「目的を果たすためならもっと確実な方法はいくらでもあるけど、でもその方法がとれるほど自分の中で覚悟が決まっていなくて、時間稼ぎのように不確実な方法を選ぶ」っていうのが、心に来るんだ。
ミステリーだしホラーなんだけど、読んでいくと、ひとりのどうしようもなく傷ついた女の子がどうにか歩き出していく物語になっていて、「そうだよな。傷ついても人生って終わらないんだよな……」ってなるのが好き。
そして多分、今回の虚魚で歩き出せた主人公は、同じように傷ついている女の子を助けるために動き出すんだろうなって思うと、柔らかいけどもろくない絆みたいなものを感じるからいい。
がっつりホラーというよりは、主人公の心の傷とそれがゆっくりと癒えていく様をミステリーとホラーを交えながら見守っていくストーリーです。思えば表紙の雰囲気がめっちゃ合ってるなぁーって思う。
やっぱねー……、めっちゃ素敵な文章と、物語と、登場人物達の掛け合いが最高なんだと思うんだわ。
というわけで、ごちそう様でした。
めっちゃ面白かったです。
では。
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