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ミステリー読書感想小説

【ネタバレ有】図書館に火をつけたら/ 貴戸湊太【初読感想】

この記事は約9分で読めます。

図書館っていう存在は、なんなんだろうね……。

自分の中では、図書館って無料で本が借りれる公共施設だし、すっごく便利だし、ありがたいし。
このブログで紹介してる本にも図書館で借りた本はいくつもあるし、身近な存在なわけですよ。

本書は、そんな図書館が焼け落ちるところから話が始まります。

これだけで、ショッキング。

いや、うん。
タイトル見ただけで、「え。マジかよ」ってなるレベルですよ?
図書館で火災? 図書館で火? 本が燃える? え、ええええ??
考えてみれば図書館って本がめっちゃあるわけなので、「そりゃあ燃えるよなぁー」って気持ちになるんですが、潜在的な思い込みというか忌避感から、「いや。図書館って燃えるわけないじゃん」と思っている部分があって。

その図書館が燃えて、数人しか出入り出来ない地下書庫から焼死体が発見されるというのが、この本のはじまり。

いや、序盤からインパクトあるな?!
思えば、最初からクライマックス。
ミステリーのお約束として、終盤で焼け落ちる洋館が開幕冒頭で燃えちゃったぐらいのインパクト。
その後も、最近の図書館事情(図書館経営を民間に委託して、やたらキレイな図書館が増えてる現状)とか、正規・非正規問題とか。
図書館の光と闇を感じつつ話が進んでいくんですが、このはじまりからの印象が強すぎる。

私は個人的に、図書館経営に民間が入るのは別にいいと思うけど、「図書館にカフェ? ふざけてる??」と思うタイプの人間なので、多分この物語の中で焼け落ちた図書館との相性は悪そう。
でも図書館を長く続けていくためには利用者が増えるのはいい事だし、蔵書が増えるのもいいことだし、民間経営が絶対的に“悪”ってわけでもないんだよなぁ……。
作中に出てくる、「予約した本人以外に本のタイトルを教えない(個人の利用履歴は残らない)」っていうのもすっごく分かるんだけど、でも読書記録として感想文をブログに書いている身からすると、「個人の利用記録はほしいな」とも思うし。
でも、個人が読んだものが第三者の手に渡って悪用される可能性を考えると、図書館の「個人のプライバシーを守るために、借りた本の情報は渡さない」っていうのはありがたいし。

……ってことを考えながら読んじゃうミステリー小説なんですよね。
連続殺人事件ではないので、息をつく暇もないほど立て続けに事態が動くことはない。
そのせいか、所々に図書館ネタ(容疑者が借りた本の詳細は教えられないとか、消火の際にずぶ濡れになった本の修復作業風景とか)が入っていたり、現代の事件に繋がるヒントが隠れた過去話が挿入されたりして、お手軽に読めるミステリー小説という印象になっています。(事件が起こって人が死んでいる緊張感はあんまりないなぁーと思いながら読んでました)

ちなみにミステリー方面でいうと、最近では珍しい「読者への挑戦状」が入っているのもポイント。

最近のミステリー小説でこの文言を見たのが久し振りだったので、ときめいてしまった。
私はまったく犯人が当てられなかったけど、でも感想文を書くために読み返してみると、「あ。これが伏線だったんだ?」っていうのがあちこちにあるので、当てられる人もいそう。

でも個人的に、スチールの本棚を倒すトリックで、“本を支えにした状態で本を燃やして、本が消失したらスチール棚が落ちて入り口を塞ぐ”っていうトリックを、本の燃えかすがそんなにないからって理由で却下したのに、その支えが“木製の本棚”ならOKっていうのは納得がいかない。(木製の本棚も燃えかすを調べたら分かるんでは?)

というわけで、「図書館に火をつけたら/ 貴戸湊太」の感想でした。
タイトルのインパクトと、現在の図書館の光と闇にスポットを当てた作品。
読者への挑戦状も用意された本格ミステリーなんだけど、私としてはどうしても図書館経営のほうに目がいきがちで、無難なミステリー小説っていう印象かな。
この作者さんの、図書館司書のお仕事小説も読んでみたいです。

それでは、次の一冊でまた!

このページで紹介した本

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