んーーーーー!!
幻想小説!!!
twitterで何度か本の紹介を見かけて、気になったので読んでみた一冊。
タイトルからして面白いし、表紙を見ても内容が分からないし、帯を見ても分からないし。
強いていうなら、本を読み終わっても理解できているのか分からなかった。
でも、そこがいい。
だって、ミステリーじゃないから。
ミステリー小説だったら謎は解明してほしいし、分からない事を野放しにしてほしくないけど、でもこの小説はミステリー小説ではないので、謎は謎のまま、分からない事は分からないまま、そっと横たえて先に進んでも問題はない。
そう思える、空気感がいい。
うん、このね、作品の中に漂う空気感がね……、最高だね。
創作物の中には、その創作物が抱え込む空気があると思うんだけど、この本はそれが独特。生命の匂いというか、樹木や水や太陽の匂いというか、一周回って腐臭さえ感じてしまいそうな空気感が、綴られる言葉に充満していて、それがいい。
まあ、なので、正直言うと内容はそこまで重要じゃないかもしれない。
小説なので何が起こっているのかを理解するための文章は必要だけど、そこから先の理解はあまり重要じゃないかも。
そう私が思っているだけなので、理解出来る人は理解できるだろうし、謎が分かる人には分かるだろうし。この本における解像度みたいなものはバラバラだと思うんだけど、私は「まあ理解できなくても、この言葉の羅列を楽しめればいいんじゃないかな?」って気持ちで落ち着いてる。
小説に理解や納得を求めているなら、この本との相性は悪そう。
逆に理解や納得ではなくて、この本をあるがまま受け入れて飛び込んでいきたいって気持ち(この本の中に溶け込んでいくような? そのまま言葉を浴びるような?)だったら、すごく面白いと思う。
SFというよりは、幻想小説。
内容があるかないかでいうと、ない類いの小説なんですよ。
死期が迫ってくると男だったら羊になる一族と、その羊を解体して一族に食べさせる役割を持った語り手の物語なので、もっともらしい内容はない。
もっと言うなら女の子なんだけど陰茎が生えている子や、男になりたい長女など、メッセージになりそうなものは散らばってるけど、それらが何かのメッセージなのか? というと、そんな気配はしない。
全部が全部言葉の羅列の中にある。
うん。こういう類いの本って、最近見かけないよね。
こういう本は「よく分からない本」に分類されるだろうし、最近の傾向だとあまり人気がないのかもしれない。だって、こういう本はうまく説明出来ないから。
でも説明したり理解や納得は難しいんだけど、こう、「嫌いじゃないよぁー、こういうの」って言いたくなる何かがこの本にはある。
というわけで、「羊式型人間模擬機/犬怪寅日子」の感想でした。
この作家さんが次にどういう本を書いてくれるのか楽しみ。
個人的にこの作者さんの本を読んでると長野まゆみさんを思い出すんですけど、次も幻想小説なのかな。
それでは、次の一冊でまた!
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