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ホラー読書感想小説

【ネタバレ有】彼女はそこにいる/織守きょうや【初読感想】

この記事は約8分で読めます。

こ、これは想像以上の良作……!!

こういうダブルミーニングの小説、大好きですよぉ!!

家にまつわる短編ホラーかと思いきや、フタを開けてみると、人同士の関わり合いの話になるのがいい。
全3話収録されていて、1話目の感じから「幽霊が出てくるしんみり系の小説なのかな?」って思ってたんですが、読み進めて行けばいくほど、印象が変わってくる。

1話目は、心残りの話。
2話目は、1話目で起こった怪奇現象の正体が実は人間で、“執拗に嫌がらせを続ける人間って怖いね”って話。
3話目は、その怪奇現象を仕組んでいた人間の話。

この3話目の話が一番好き。

内容的にはヒトコワ系なのかな? って思うわけですよ。

おばとの思い出のある家を守るために、その家に引っ越してきた住人達に嫌がらせをして退去させていく男の話なので、その執着を見ると怖い。

でも文章を読んでいると、不思議と気持ち悪さがない。

織守さんの文章のおかげなのかな。
その家に執着し続ける男が淡々と描写されているからなのか、生々しいさがない。
むしろ、話の途中に出てくる倉木との関わりを読んでいくと、うまく表現できないけど、作中で描かれる倉木と男との絶妙な距離感が心地よくなってくる。
この距離感がね、いいんだわ。
開かず離れず、でもどこか気安くて穏やかな距離感。
男には男の目的があって、倉木には倉木の秘密があって、結果的にふたりの関係は破綻してしまうのだけど、最後の倉木の言葉とか、怖い以上に心の入ってくる感覚がある。

私は、この倉木と男の関係を読めた時点で、大満足ですよ。

幽霊がでる。ホラー小説である。っていうと、怖いものって無意識で結びつけるけど、この本に関しては最後に倉木の話が入ることで、怖さではないしんみりとした印象で終わるのがいい。

(まあそれにしたって一番怖いのは、1話から登場してるのに最後の最後でサイコパス振りを発揮した大家さんなんですが。この本のヒトコワ要素は、一つの家に執着して住人に嫌がらせをし続けた男ではなくて、死体が出ると家の価値がさがるからっていう理由で死体を遺棄した大家さんだと思いますわ)

というわけで、「彼女はそこにいる/織守きょうや」の感想でした。
私、この本の「彼女はそこにいる」っていうタイトルも好きなんですよねぇー。
1話目に登場する死んだ妹ちゃんではなく。
3話目でようやく死んだ倉木が家ではなく男についているという意味で、「彼女はそこにいる」と表現されてる。

でも3話目の男からすれば、1話目からずっとおばが住んでいた家にはおばの気配があって、「彼女はそこにいる」なんですよね……。
タイトルの“彼女”は、おばなのか、倉木なのか。

その意味を考えると、このタイトルの意味深さにぐっとくる。

それでは、次の一冊でまた!

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