どうも。
twitterで読了ツイートを見て興味をもった一冊。
思えばこの作者さんの作品自体はじめて手に取るので、「多分、ホラー小説なんだろうなぁ」と表紙を見ながら思っていました。表紙のなんともいえない雰囲気がいいですよね……。
で、読んでみると当たらずとも遠からず。
ただ、今まで読んできたホラー小説の中では、かなり癖の強い作品だと思う。
最終的に、「幽霊(と一般的なホラー小説で定義されるもの)は存在しないんだよ」で終わる話。
いや、冷静になって考えるとそれだけで随分と一般的なホラー小説から離れてる気がするんだけど。
第一部では典型的な因習村の悲惨さとドロドロとしたジャパニーズホラーの嫌な雰囲気をたっぷり味わえる展開になっていて、第二部では打って変わって愛する人を失った女の子の奮闘と「愛の力は偉大だね」で締めくくられるエンタメ要素もりもりの展開が繰り広げられるので、なかなか話の展開についてけない。
この“ついていけない”っていうのは、話が急展開すぎて理解が追い付かないのではなくて、朝の時は「Aだと思う」と言ってたのが、昼になったら途端に「Aじゃない。実はBだった」となるので、急な方向転換に振り回される感覚に近い。
ホラー小説を読んでいて(しかも第一部で散々恐怖を味わった後で)いきなり、「幽霊は存在しないのではないか?」って言われたら戸惑うんだよなぁー……。
まあ、でも因習ホラーもバトルホラーも、ぶっちゃけ「ホラー」という定義には入るから、広い意味ではこの作品もホラーってことでいいのかな……??(いや最終的に「幽霊なんていない」みたいな展開になるんだけれど)
ただ、私は第一部のとんでもなく救いようがなくて腐敗していくしかない絶望的な空気感が好きだったので、第二部に入ってからのがらりと変わった空気感にかなり戸惑ったけど。(正直第一部の雰囲気のまま話が終わってもよかったのになぁー、第二部のバトル要素は必要だったのかなぁーと思わなくもない)
正直浅木がこの世界の真相(幽霊と言われる存在は生きている人間が死ぬ直前に生み出した思念。あるいは生きている人間が死者を思って投影した物)に気づいて生き霊を残して死んだ時点で、ある程度展開は読めてしまうんですよね……。そして想像通りに、ヒロインを助けるために第一部で死んだ主人公が現れるし、ヒロインは助かるし、愛を叫ぶし、第二部はそこはかとなく予定調和の匂いがする。
まあその分、第一部と第二部を踏まえてのエピローグが、なんか得体の知れない不気味さを漂わせているので(ハッピーエンドでもバッドエンドでもない、その全部をぐちゃぐちゃに混ぜ合わせて混沌とした薄気味悪い終わり方)、やっぱホラー小説だわ、この本……となるのが不思議。
なので結局……、私は作者さんに感情を遊ばれただけ(褒め言葉)だったのか……??
これ、第一部で終わってから「おー、純和風ホラーだなぁ」で終わってたし。
第二部で終わってから「なんつうか予定調和でつまらないな」になってたし。
エピローグまで辿り着いてようやく、「…………なんか気持ち悪い終わり方だけど、ホラー小説だなぁ……」って気持ちに辿り着いたので、なんか色々と今まで読んできたホラー小説と違うテイストなんですよね……。
という感じで、この本についてはうまく説明できない。
自分の中でしっくり来る言葉を選んで、「癖が強い」って表現したけど、もっと適切な表現があるかも? でも、今は思い浮かばない。
強いていうなら、この映画、めっちゃ映像向きだなと思った。
第一部での山を駆け下りるシーンや、浅木が死ぬシーンや……、村人が次々と殺されていくシーンとか。
読んでいて、「あー、このシーン、映像化したらめっちゃ面白いだろうなぁー」っていうシーンがたくさんある。
作者さんの文章も巧みで、ここぞとばかりの演出が息を呑むのも忘れるぐらいに迫力があって、ホラー小説を読んでいてはじめて、「文章で恐怖を感じたのは、もしかするとこの作者さんがはじめてかもしれない……」と感じたぐらい。
ところどころにネットの怪談話でよく耳にする話もでてくるので、映像向きな事も含めてエンタメよりのホラー作品ってことでいいのかな。これ。
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