同じ作者さんの本である「坂の上の赤い屋根」を手に取った時に同じ本棚に置いてあって、「なんか気になるけど、今は読めないしなぁー。また今度かな」って思っていた一冊。
手が空いたし、twitterで紹介している人もいたので、いい機会だと思って読みました。
「真実」と「虚構」を行ったり来たりするミステリー小説……、って感じなのかな。
この話における真実と虚構がすごく曖昧。
というか、真実を虚構として風化させたい誰か(多分犯人だよな? 作中では明記されてなかった気がするけど)によって、真実が虚構に飲み込まれていく寸前のような雰囲気。
「真実」と「虚構」が入り交じり、どれが真実なのか分からなくなっていく感じがゾクゾクするんですよねぇ……。
存在するかどうか分からない、むしろ話の最初の頃は「これって都市伝説でしょ」となっていた“祝言島”という島で撮影された映画を巡るミステリーなんですよね。
なので私も「いや、この島、ないんだよな?」「え、あるの? ええ?」と真実と虚構を行き来しながら読み進めて行くんだけど、話自体はどんどん謎が深まっていくし、訳が分からなくなっていくし、物語の終着点がまじで分からない。
登場人物達がみんな「祝言島」に興味を持つけど、真相は謎のまま。(左瞼に痣がある人間が無意識に「祝言島」というワードに引っかかりを覚えてる? とも思ったんだけど、そう言うんでもなさそうなので、珍しい名前なので気になったって感じなのかな)
この「ラストって、どういうオチなんだ?」って首を傾げながら読む感じ、好きだわー。
読み進めて行くうちに想像できるラストも達成感があっていいけど、まったく想像外のところから(けれど突飛でもなく納得できる感じで)ラストが差し込まれると、「まじかぁー……」と頭を抱えたくなるんですが、この話はそういう類いの本だと思う。
左瞼の痣と非行少年(少女)を隔離してた施設って話がでた時点で、なんとなく「……これって、ロボトミー手術の話なのかな……?」というのは、想像できたんだよなぁー。(なんというか非合法な更生プログラムって言われると、やっぱりロボトミー手術なんでは? って気持ちがあったので、当たりをつけるのは楽だったし)
そこからロボトミー手術の副作用として現れる二重人格や記憶の欠如まで話が進んで、「おおー。つまりは左瞼に痣がある子は、みんな“祝言島”の被害者なわけかぁ」となったんだけど。
まさかの「再現ビデオ」の使い方が、すっごいびっくりした!
この本の一番のびっくりポイントというか、「え、マジか」のポイント、ここじゃない?
再現ビデオ→再現しているものだから、真実を語っていない→誰かの視点からの再現ビデオの場合、その人の「目」に映るものが再現されるから、虚構も混じる……っていう当たり前のことなんだけど、でも「再現ビデオだから嘘が混じってるかもなぁー」とまでは思えても、それ以上の事は考えてなかった。
まさか再現ビデオで普通に喋ってる登場人物二人が二重人格で、本当はひとりの人間なんて、思わないやん?!
いやぁー、その真相が語られた時は、「まじかぁー。でも再現ビデオだもんな。こういうトリックができるのか、まじかぁー。やられた…………、まじかぁー……」ってなってたけど、言われてみれば「再現ビデオ」だし虚構だし、できるんだよなぁー。
で、これを踏まえてもラストも納得だし、最終的に「そして誰もいなくなった」的に、祝言島のことを語る人も、真相を知る人間もいなくなる感じ、好きだわ。
ジャンル的にはイヤミスらしいんだけど、いうほどイヤミスかな……?(いや人の脳みそいじったりしてる時点で倫理的にはアウトなんだけど、そこまで読んでて精神的な嫌悪感は感じない作品だったので)
再現ビデオのトリックがよかったので、気になる人は読んでほしいなぁー。
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