twitterで読了ツイートが流れてきたので、気になって手に取ってみたシリーズ。
「スピリチュアルが科学医療を駆逐した世界」と言われたら、「え。どんなんだよ」ってすっごくワクワクするじゃないですか。
私のいる世界では生唾ものとして扱われているスピリチュアルが台頭する世界……、どんなんだろ。
想像以上の、ポストアプカリプスでした。
率直に、「あ。これ、人類死滅するわ」と感じる、空気感。
今まで色んなホラーやミステリーを読んできたけど、その中で一番怖いかもしれない。
ディストピアではないんですよね。
ディストピアは曲がりなりにも人類が存続できそうな空気感が(人類がめっちゃ不幸であっても)あるんだけど、こっちはその“存続できそうな空気感”さえ根こそぎ奪っていくスタイル。
だから、ディストピアより質が悪い。
壊れて、歪で、どうにかそれをつなぎ合わせて取り繕ってるけど、所々にボロが出ている。
怖いし、気持ち悪いし、登場している人間のほとんどが頭がおかしい。
でもこの「頭がおかしい」って感覚は、私が一応は科学や医療が発達した世界で生活する人類だからで、本の中のスピリチュアルが主流の世界に生きてる人達にとっては、この頭がおかしい世界が日常なんですよね……。
38度が平熱で。
解熱剤も飲めなくて。
病気になっても満足に治療して貰えず。
治療と言って、自分の尿を飲まされ。
病気でしんどい最中に千羽鶴を押しつけられ、それを折ってくれた人全員に電話をかけろと言われる世界。
健康な人を不健康にして、不健康な人を丁寧に丁寧に殺していく……、これで誰かが自覚的にやっていればいいんだけど、登場人物達のほとんどが無自覚で、笑顔で、病人を死へと追いやっていく。
まあそれでもスピリチュアルが効果を発揮して、それなりに人々を幸せにしてるならいいんだけど、この本の中で繰り広げられる血液型の会話を読むと、「あ。ここの人達って、根拠のないことを根拠のあるものとして必死にすがってるんだな」と伝わってきて、ますます気持ち悪いものとなっていく。
AB型に対する風評被害とか酷すぎるし。
2話目の主人公の旦那さんを見てると、スピリチュアルにすがって考えを改めて生きても、あっさりと手のひら返しされるし、本当にいいところが一つもないんだよな……。この本の中のスピリチュアルに関して言えば。
そんな世界を日常として生きている人達を、気持ち悪いと思いながら本を読めることに感謝したい。
作者さんがどういう意図でこの本を書かれたのかは分からないけど、私には十分な反スピリチュアル小説だった。怖い。
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