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1月読了読書感想小説

【ネタバレ有】彗星を追うヴァンパイア/河野裕【初読感想】

この記事は約9分で読めます。

以前からなんとなく気になっていて、手に取った一冊。
とはいえ、この作家さんの本ははじめてだし、タイトルを見る限り、「ファンタジー……? 最近ファンタジーを読んでないなぁー……、登場人物の名前は横文字か。大丈夫かな」と色々考えてました。
正直、苦手意識もあったと思う。

いやもう、考えるだけ、無駄でしたね。

なにこの、めっちゃ綺麗な話。

綺麗。……綺麗、ほかに適切な言葉があるのかな。
この本を表現するのに私の中で一番適切な言葉が「綺麗」なんですけど、綺麗な話だった。

「綺麗な作品ってありますか?」って聞かれたら、まずこの本をあげるね!

読み終わってからしばらく現実に戻ってこれなかった。
いやまじ、なんていう本を読んでしまったんだろ。

ニュートンが生きていた時代の話だけど、小難しい感じはなくて読みやすい。
天文学とか数学とか、専門用語みたいなものはたくさん出てくるけど、それらを完璧に理解していなくてもわかりやすく読めるので、読むのにつまづく心配もない。(というか私はほぼほぼそこら辺の専門分野を理解しないまま読み終わって今なので、理解できればもっと楽しめたかも知れない)

そしてなにより、この本の言葉の定義がとても綺麗。

話の内容としては、ヴァンパイアと数学者が出会って共に生きた数年の物語で、その時代背景を描きつつ、ヴァンパイアと数学者の友情と別れを描いてるんですが。(ちなみに時代背景もあんまり詳しくないんですが、詳しくなくてもさらっと読めるので大丈夫でした)

言葉の定義がいい。

例えば作中に出てくる「怪物を殺し尽くすものを探している」という言葉。
序盤でその言葉が出てきた時はヴァンパイアのアズの特異性もあって、「あ。そっかアズは自分を殺してくれる存在を探してるんだ?」となるんだけど、話が進むにつれて、「怪物」という言葉の定義が変わっていくのがいい。

怪物が未知(正体が分からない物)になり、そして無知(正体が分からないから怖い物)に定義が変わっていく。

それは私がこの物語に対しての理解する深度にも繋がってると思う。
最初はファンタジーとして読んでいたけど、読み進めて行くうちにアズとオスカーの関係性が楽しくなり、オスカーの精神性(未知を解き明かしていこうとする熱意みたいな)に魅せられて、ふたりの結末から目が離せなくなっていく。
つまりアズが最初に言っていた「怪物を殺す尽くすもの」というのは、物理的に怪物の命を奪えるものではなく、この世のありとあらゆる未知を解き明かし、この世界から無知を取り除いていく存在であり、それは数学者であるオスカーのことを指していると分かる。

この言葉だけでも、すっごく、この本の言葉選びが綺麗だと思う

もう言葉選びでお腹いっぱい。
難しい専門用語も時代背景も気にならない(分からなくても読むのに苦労しない)ぐらい、言葉がいい。
いやいや、他にも素敵な部分はたくさんあるんだけど、魅せるシーンを魅せるように最適な言葉を適切な場所に置いて、読んでる人間の心を離さないって素敵すぎるんですよ……。
随所にそんな言葉達が散りばめられていて、最後までじっくりと読んでました。最後までぎっしり面白かったです。

でもなかなか現実に戻ってこれないんだよなぁー……。
感想文を書いたので、これでようやく現実に戻れたらいいなぁー。

この作者さんの本、あと二冊あるんですけど
ただこの本の熱量をあと二冊も続けて読んだら、私がそうそう立ち直れそうにないんで、少し休憩してから読もうかな。

このページで紹介した本

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