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読書感想小説

【ネタバレ有】炎の塔/五十嵐貴之【初読感想】

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うぁー、王道パニック小説だー!
序盤にどんどんアカン情報がお出しされて(ネズミが配電線をかじって火花を散らしていたり、過剰電圧が起こっていたり、なによりビルを管理する人間達の「このビルで火災が起こるはずがない」という最新機器に対する盲目的な信頼)、それが伏線が回収されるごとにヤバイ方向に突き進んでいくという話。

もうそのやばさのドミノが凄くて、読みながら思ったのが「あ、これは絶望のピタゴラスイッチだわ」でした。

むしろここまでピタゴラスイッチできるのがすごい。
引き返せるチャンスはいくらでもあったのに(過剰電圧の時点で電源を切るとか。火事が起こった時点で客を全員避難させるとか)、それらが全部上層部の見栄とエゴで握りつぶされていった結果自体が悪化していくのは、なんか現代社会でもありそうだよなぁー。

そして、人が死んでいくのが、もうね……。

群像劇チックに色んな人の視線で被害が描かれていくんだけど、読んでいる私から見ると、誰が生き残るのかがさっぱり分からない。
「主人公は多分死なないだろうけど、じゃあこの人は? 主人公の彼氏は? ビルのオーナーは?」と、次に誰が死ぬのか分からない不安にハラハラ。
しかも死ぬのだって突然死ぬので(文字通り一行で炎が壁や天井から噴き出して焼け死ぬ)、もう誰が死んでもおかしくはない絶望感が半端ない。
そして消火の手立てもことごとく消え失せていくので、もう終盤は読んでて「えー……、ここから先で逆転できる要素なんてあるか?」となってました。

だからもうね、塩酸が凄いのよ。

私、この本に関しては「塩酸がすごい」と言いたい。
序盤に出てきたこの塩酸、絶望のピタゴラスイッチの中で絶対に「いやぁー、これ、誰かが浴びて死ぬでしょ。社長あたりが浴びて死ぬでしょ」ってほの暗く思ってたんだけど、まさか、塩酸と化石を使って二酸化炭素を発生させる伏線だとは思わなかったー!!!

いやもう、今までの絶望のピタゴラスイッチの中でも最強最悪の一手だと思っていた「プールサイドの塩酸(字面だけでもすごい)」が終盤に来ていきなり、「実は消火に使えるラストウェポンでした!」になるとは思わないわけですよ。

誰が考えたんだよ、こんな設定。作者様だけど!!

今まで事態を悪化させる伏線しかなかったのに、ここに来て燦然と輝く塩酸といったら……!

この展開、もうしびれるしかないといいますか。
もう背筋に電流が走ったというか、「え。うそ、まじか。本当に?!」とめっちゃ色めき立ちましたね!
もう今まで読んできた本の中で一、二を争うぐらい秀逸で予想できなくて、背後から不意打ちを食らったすごい伏線だと思います!(ま、まあ、私に科学の知識がなかったせいかもしれませんが。人によっては塩酸と化石が出てきた時点で二酸化炭素を連想できた人もいそうだし)

塩酸と化石で消火が可能と分かってからのラストまでの展開もよかったし、最後まで楽しい読書体験をさせていただきました。
んー、面白かったー!!
この作者さんのシリーズ色々と読んでいますけど、この本が随一に面白かったです!

というわけで、「炎の塔/五十嵐貴之」の感想でした。
ごちそう様でした!

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