この本、猫、出てこないな?!
表紙は猫だけど、猫不在。猫要素なし。
読んでいて、「ん? これはどういう風に読み進めていったらいいんだろう?」となる本。
読みにくいとか分かりづらいでがなくて、方向性が分からないというか、取り扱いに困るというか。
最初は売れないミステリー作家と編集部のメタ的な小説だと思ったんだけど(ミステリー小説における鉄則とはなにか、とか。編集部の悲哀とかあったので)、読み進めて行くうちに私が今読んでいるのは「犯人の遺作」だと判明するわけで。
でも「犯人の遺作」だと分かった後も違和感があって、さらにどんでん返しがあって、本が終わる……という感じ。
話が結構がらりと変わるシーンが2回あるけど、一回目のそれは驚いても二回目はあんまり驚かない。
中盤からのルポ部分を読んでる時になんとなく「あ。この事件の新犯人って、弟子のほうじゃないかな」って勘づくので(隠したい事実を隠すという意味では弟子も同じだったから)、まさにその通りの展開だった。
でも展開が読めるけど、つまらないってわけじゃないんだよなぁー。
作家と編集部のメタ的な会話とかを読んでいると、「あぁ、本当にそういうことありそう」って思えてくるし、読んでいて面白い。
なんというか、本格ミステリーというよりは、メタ要素や本自体に組み込まれているミステリーを堪能するって感じ。
めっちゃ変化球的ミステリーなので、読む人は選びそう。
ただ私は結構面白かった。
この本の序盤と中盤では、この本自体が犯人の遺作(そしてその犯人の弟子だった男が解説を載せている)という設定で存在しているんだけど(だから読者である私はその本を手に取った人間という役割を本から与えられる)、終盤からはその雰囲気が消し飛んで新犯人が暴かれる。
こういう特殊設定ミステリ-も面白い。
ただなんというか。
この本って読み終わってようやく、「なるほど?!そういう事だったんだ?!」となる系のミステリーだと思う。
つまりめっちゃ感想を書きにくいです。
というわけで、「猫の耳に甘い唄を/倉知淳」の感想でした。
ちなみに私は帯の「その企みに、三度驚く」で結局二回しか驚いてないんですが(一回目はメタ小説だと思っていたのが実は犯人(偽)の遺作だったと明かされたとき、二回目はルポが終わってからまだ話が続いたとき)、結局三回目ってどこだったんだろ……?
もしかして猫の表紙なのに猫がまったく出てこないのが、三つ目なのかな……??
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