当サイトではアフィリエイト広告を利用して商品を紹介しています
読書感想小説

【ネタバレ有】逃亡者は北へ向かう/柚月裕子【初読感想】

この記事は約8分で読めます。

んー、なんというか、重たい。
重たい。しんどい。分からない。
この話を根本的に理解できているのか? と思う。

話の展開を見るに、ここで犯人が助かってしまうとご都合主義だろうし。
ここまで犯人が追い詰められてしまったら、死ぬしかないだろうし。
犯人が死ぬのが妥当というか一番分かりやすい展開なのははっきりしていて、それでもこの犯人に対して「助かって欲しい」って気持ちが沸くぐらいには犯人が気の毒。

この話の犯人が、あまりに可哀想すぎる。

親に愛されていないと思いながら生きてきた男が傷害事件(半分以上巻き添えを食らったような原因)を起こして、会社もクビになったと思ったら東日本大震災に遭遇して、そこで今度は殺人事件を起こしてしまって、最終的には射殺されるわけで。
この男は前世はどんな悪人だったんだ? というレベル。
正直、犯人の不遇さが際立ち過ぎていて、それがこの話のノイズになってるんじゃないかなと思う。
不幸な人間は一生不幸なのか。幸せにはなれないのか。そんなことを考えてしまう。

ただあの東日本の震災が、犯人のような生まれたときから不幸を背負い込んでしまった人間も、犯人を追いかける刑事のようなごく普通の一般人も、色んな人間の人生を飲み込んで滅茶苦茶にしたと言いたいなら、そうなんだよ。

だから東日本大震災の怖さの一端(全ての人間の人生を平等にぐちゃぐちゃにした)という意味では、この本はすごくまっとうというか、その残酷さを描き尽くしている。

人の生き方の形なんて嘲笑うように、虫けらを踏み潰すように、あの震災は起こったんだと思う。
だから震災が起こる前のその人の人生なんてお構いなしに震災は飲み込んでいった。
この話はそういう話。

この話にハッピーエンドはないんだなと実感する。

それでも私は犯人に幸せになって欲しかったんだけど。

だから余計に、この話にどう向き合うのがいいのか分からないんですよね……。
犯人にとって不幸は生まれたときから始まっていて、ずっと不幸で、その不幸の延長線上に東日本大震災があったけど、でもこの東日本大震災が起こらなくても彼の不幸はずっと地続きで存在していて、「地震があってもなくても、彼は不幸のままだったかも(まあ射殺される未来はなかっただろうから幸せを掴める可能性はあったかもしれないけど)」ってなる。

そこがね、なんか言葉にしにくい気持ちになる。
震災によって不幸になった人はいっぱいいるんだろうけど、でも震災前から不幸だった人もいるんだよなって。
逆に刑事のほうは震災で娘をなくして、一気に人生が様変わりして、震災で大事なモノをなくした人間として描かれている。
このふたりの存在から感じる震災の温度感みたいなものってなんなのだろう。
こういう事を書くととても不謹慎だと思うのだけど、犯人からすれば逃亡生活の途中で男の子と出会って、ほんの一瞬でも自分を頼って気遣ってくれる存在との触れあいがあったのは、救いだったんじゃないだろうか。

不幸中の幸い。なんて言葉を、東日本大震災を描いた本の感想で書いていいのか迷う。
でもそのぐらい犯人はずっと不幸で可哀想で、ようやく手に入れた光が震災後の小さな男の子との出会いだっただと思うと、「最後にこんな形であれ出会えて良かったね」って言いたい

まあ、最後に犯人、死ぬんだけどなぁー。

というわけで、「逃亡者は北へ向かう/柚月裕子」の感想でした。
正直今までに読んだことがないテイストの本だったので、感想を書いている今でも、どんな風にこの本のことを考えればいいのか分からないです。

それでは、次の一冊でまた!

このページで紹介した本

コメント

タイトルとURLをコピーしました