ずっと追いかけていたシリーズの最終巻!
一巻目と二巻目は立て続けに読んだんだけど、今回の最終巻は読むのが遅れてしまっていて、今回ようやく読むことができました!
一巻目は圧倒的エンタメ感がよくて、二巻目はアウェイな状態からの脱出がテーマだったんだけど、それでいうと今回の最終巻のテーマは“継承”かな? と思う。
実際の火災現場でどれだけの消防士が亡くなっているかは、正直私には分からないんですが。
このシリーズにおける主人公の職業である消防士の死亡率が高いのは、読んでいる人ならお察しの通りってぐらい、高い。
そして今回の最終巻においては、今まで主人公を引っ張ってきた頼れる先輩や上司……いわゆる設定がしっかりしているキャラまで死んでいくんですよね。
そのあたりが、しんどい。
一冊目でも消防士仲間は死ぬんだけど、一冊目はまだ「え。こんな方法で消火活動するの?!」っていうインパクトやどんでん返しの要素が強かったので、しんどさは少なかった。むしろエンタメ感が強かった。
そのエンタメ感を取り払ってシリアスに重たく、現実感(実際に火災の現場でここまで消防士が殉職することが世間的に許されるのかどうかはさておき)に重きを置いたのが、今回の話という印象。
だから一冊目や二冊目の“不注意や人的ミスによる火災”ではなくて、最終巻の火災の理由は“放火”だし。
その放火理由に込められた感情を読んでいくと、「……、これ現実で起こってもおかしくないよね……?」って薄ら寒くなる部分もある。
だから最終巻は、エンタメっていうよりも、「現実に起こりうるかもしれない大規模火災」っていう印象が強くて、一冊目みたいに「面白い! なにこの本!! めっちゃ面白いんだけど!!」ってならなかったんだよね……。(かといって面白くなったわけではなくて、本を通して私が住んでいる世界を見た時に一冊目は創作物として純粋に楽しめたけど、三冊目は薄らと現実が見えてしまったという感じ)
その中で一冊目から消防士を辞めようと何度も思っていた主人公が、とうとう消防士をやめてしまうかもしれない……というところで、このシリーズは終わる。
こういう終わり方だと、「え? 主人公仕事やめるの?! だったらテーマが“継承”なのはおかしくない?」ってなるんだけど、そこはうん、話を読んでいくとなんとなく分かるんだけど、多分この主人公消防士を辞めないんだわ。
本の最後では頼れる先輩と上司の死に打ちのめされて消防士を辞めると決意するけど、これまでの一巻目と二巻目で「あ。でもこの主人公、多分消防士を続けるんだろうなぁ」と私が感じたみたいに、多分今回も主人公は消防士を続けていく。
その結果、亡くなった消防士達の無念を引き継いでいく。
文字通り“継承”の物語なんだと思う。
まあ実際の消防士の現場はこの本が書いてるほど死亡率は高くないと思うんですけどね……。さすがにここまで死亡率が高いとニュースになりそうですし……。
というわけで、「命の砦/五十嵐貴久」の感想でした。
素直にいうと一冊目のような圧倒的エンタメ感を期待してたので、その点はちょっとがっかりしました。でも「現実に起こるかもしれない話」として読むとなかなかに重みのある話だと思う。
それでは、次の一冊でまた!
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