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BL読書感想小説

【ネタバレ有】だから夜は明るい/君嶋彼方【初読感想】

この記事は約14分で読めます。

人の幸せは、人それぞれである。

すっごい身も蓋もないことを言い出すと、そんな感じの本。

物心ついた時から男が好きだった男性と、これまでずっと女性と付き合ってきた男性のカップルを中心にした、人間模様。
元カノや、ずっと息子が女性と結婚すると思っていた夫婦など、色んな立場の人達が登場する一冊。

同性愛の話に終始しているようで、ページをめくると、同性愛に理解を示しているようで実は無神経なんじゃないかと思える女性や、ゲイ(オネエ)に対するレッテル貼りなんかも登場して、読み進めていくごとに、色んなことを考えさせられるんだけど。

でも、この本を読んでると、こう、考えさせられること自体が、なにかのレッテル貼りになってるんじゃないの? って思えてくる。

たとえば、同性愛に理解を示す女性なんていうのは。
「貴方たち(同性愛者)は今まで苦労してきたんだから、報われて当然! 堂々としていて当たり前! 何も隠すことなんてない!!」と主張するけど。
その言葉の裏側に、「貴方たちは気の毒な人達だから。可哀想な人達だから」って思い込みがちらほらと見え隠れするんだよね。

それに対して別の登場人物が、「不幸だと決めつけるな」って言い返すんだけど。

そう、そうなんだよ。不幸とは限らない。
マイノリティだからって、不幸とは絶対に限らない。
でも、なんか世間では、当たり前のように「結婚できなくて気の毒な人達」「可哀想な人達」「だから一緒に声をあげてあげる」みたいな空気感がある。
この「可哀想」って言葉は、なんだろ。
親から拒絶されることとか。
好きな人と手を握れないこととか。
異性愛者だったら出来ることができないことを「可哀想」っていってるのかな。
そして話の中では、この「可哀想」って言葉にゲイの人達も慣れていて、免罪符のように使うシーンがある。

この、一定の状態を画一的にカテゴリー化して、外からも内からも「可哀想」ってなるのは、なんなのだろ。

もうこうなってくると、「いや。そんなの、個性なんてどうでもいいじゃん。ようは、その人自身だよ。その人個人の幸せだよ。大事なのは」って言いたくなるんだけど。
でも人間は、社会で生きてる生き物だから、絶対に自分以外の人間の目から逃れられないんだよね。
そして、「その人が幸せならいいんだよ」って言葉も、いろんなことから目をそらした言葉なのだと思う。

読書っていうのは、必ずしも読み終わった後に、答えが出てくるものではないと思ってる。

むしろ、分かりやすい答えが出てくる方が稀で、感想文を書いてても、「これってどういうことだよ……」と頭を抱えることのほうが多い。
今回のこの本も、そういう本だと思う。
「君の答えは、この本を読み終わった後で、君自身が見つけるものなんだよ」と言われている気がする。

というわけで、「だから夜は明るい/君嶋彼方」の感想でした。

いやぁー、この作家さん。
はじめて読むんですが、文体は柔らかくて心理描写もするすると頭に入ってくるから、なおさら、ゲイの人達が置かれている立場や、その周囲を取り巻く人達の心情がぐいぐい入ってくる……。

私は、この話の主人公達に、「幸せになってね」としか言えないわ……。(でもそれはそれでまあ、他人事なんですよね……)

それでは、次の一冊でまた!

花邑がオススメする、次の一冊!

生きづらい男女をテーマにした短編小説。
ぎこちない恋愛の話も収録されている一冊です。

男の子同士のじれったい恋愛といえば、長野まゆみさん!
白いひつじは、その中でも比較的伏線が分かりやすく読みやすい一冊です!

BLではないのですが。
男同士の言葉にできない感情を凝縮した一冊といえば、これ!
ふたりの掛け合いが絶妙な一冊です。

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