知ってる? ホラー小説って、怖いんだよ。
というのを、まざまざと感じる当作品。
今までホラー小説を読んで「怖い」って感じることはあんまりなかったんですが、前作の「ぼぎわんが、来る」に並んで、今回も怖かった。
空白が怖い。
隙間が怖い。
絶妙に短い言葉の羅列が怖い。
読むホラー小説って言葉がぴったりくる作品。
小説なので「読む」のは当たり前なんだけど、読んで恐怖心がじわじわと迫ってくるというか、怖いという感覚をじっくりと味わえる。
読むスピードは人によって違うわけだし、映画みたいに問答無用で脅かしてくる技法も使えないなかで、「いやいや! めっちゃ怖いじゃん!!」ってなるのが好き。
書かれている言葉が怖い。
もう、澤村さんの文体が怖いんだよ。
この作者さんの、適度に短くて、空白がある文章が怖い。
恐怖心でざわざわしてる心にすーっと入ってくる擬音が凄い。
人形の笑い声がまじでいい。
ホラー小説って怖いんだ?! と思う。
気持ち悪さやグロではなく、心の中に広がっていくじんわりとした恐怖がいい。
といいますか、ホラー小説はミステリー小説のように謎解きをしなくてもいいんですよね。
謎は謎のまま放置していてもいいし、逆にどんどん謎を解き明かしていってもいい。
中途半端に解明された謎がさらに怖い時もあるし、ホラー小説だからこその説明の少なさと謎が、ますます絶望を引き立てていくこともある。
今回この小説を読んでて思ったわけでして。
ホラー小説って全部の謎を白日のもとに晒す必要ない。
だって結局、今回の呪いの元凶だった人はなんで他人を呪えたのか謎だし。(結局そういう体質だったとしか言えないし)
呪いの正体に対しては全くの謎。(地面からやってくるから地獄とか土地とかそういう概念……?)
でも呪われて死ぬのは確定してるから、対処しなくちゃいけない。
対処するためには呪いの元凶を確認する必要があるけど、結局なんで呪われているのか分からない。
ミステリーだったらこの辺が分からないと「んー! 消化不良!!」ってなるんだろうけど、こっちはホラーなので、分からずと怖い。怖くて不気味。それがいい。
そして、最後に呪いの元凶だった人が死んで呪いが消えるわけだけど、その死に方もいい。
呪いの元凶を殺す=呪いが解けるって方法はオーソドックスだけど、その終わり方がただ殺すわけではないから、最後までがっつり面白かった。
そうそう、こういう死に方がいいんだ。
呪いから解放されるために元凶を殺すんだったら、罪悪感とか後ろめたさがいっぱい残りそうだけど、作中の終わり方だったら後腐れがなくていい(巻き添えを食らった人達からすればとんでもない最後だけど、ホラー小説における呪いのはた迷惑さとして考えるとこんなものだと思うし)
というわけで、「ずうのめ人形/澤村伊智」の感想でした。
話の怖さもそうだけど、「ぼぎわんが、来る」の時からお付き合いしていた真琴ちゃんと野崎さんが結婚してくれたのがうれしかった。
呪いとかヤバイものが蠢いてる世界なので今後も心配だけど、ふたりとも幸せになってくれたらいいな!
それでは、次の一冊でまた!
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