霧と硫化水素によって、陸の孤島と化した病院。迫るタイムリミットと不可解な連続殺人事件、果たして犯人は誰なのか?!
いや、もう。
病院が脱出不能になる+時間が過ぎれば全滅っていう設定を、硫化水素っていう分かりやすい毒素で表現するのがすごいし。
話を読み進めて行くにつれて、病院建物がどんどん硫化水素に飲み込まれていくのも絶望的だし。
気分的にはバトルロワイヤルの「時間制限で移動範囲が減少していきます」状態だったんですが……、どうですかね??
しかも読んでいて漠然と「病院の1階にはもういけない。外には出れない」って思い込んでいたら、まさかの伏線。
そうだよね! 硫化水素を防ぐマスクがあれば、行動自由なんだよね!!
この“硫化水素を防ぐマスク”っていうのが、今回の話のキーアイテムなんだけど。
展開が絶妙で、「そんなものないんだー!!」と思って読んでいたから、作中で「あるじゃん。マスク!」ってなった時に、「マジかよ!」となるのがいい。
最初は陸の孤島で、どんどんタイムリミットが迫っていって、行動範囲もどんどん狭くなっていて、その中で起こる不可能犯罪という展開で。
でも、マスクが登場してから見る景色が変わって、事件が解決していくの、いいですよねぇー。
一方で思うのが、やっぱり、この作者さん、前作が凄すぎるんですよ。
前作の“禁忌の子”がとにかく良すぎるので。
禁忌の子と比べてしまうと、どうしても色褪せてしまうんですよね……。
これに関しては私の方にも理由があって。
今回の本は、霧と硫化水素を巧みに使った陸の孤島と化した病院での殺人事件なので、いわばクローズドサークルなわけですよ。
登場人物達が色んな行動をしていて、それを一つ一つ探りながら、矛盾を紐解いて、犯人を見つけていくミステリー小説。
最近でいうなら、ライアーハウスの殺人もこのクローズドサークル系なわけですが。
……私、このクローズドサークルのミステリー小説、苦手っぽい……。
いや、もうこれは個人的な好き嫌いの話だから、どうしようもない!
もうひとついうと、前回の“禁忌の子”は、家族や出産といった、自分でも身近に感じられるものがテーマだったので引き込まれやすかったけど(そして身近なぶんだけ感情も乗りやすかった)。
今回のテーマは、この国における地域医療の現状といったもので、多分作者さんが抱く情熱ほどの強さを私が持ち合わせていないのだと思う。
禁忌の子の作者さんだから、めっちゃ期待値が上がりまくってたっていうのもあるんだろうけど、難しいなぁー。
というわけで、「白魔の檻/山口未桜」の感想でした。
ちなみに、他にも現役医師が書くミステリー小説っていうのを何冊か読んだんですが、この作者さんの本が圧倒的に読みやすいんですよね。
読みやすいから、苦手なクローズドサークル系の本でも最後まで読めたわけですし。
クローズドサークル+タイムリミットが好きな人に、オススメの作品です!
それでは、次の一冊でまた!


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