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読書感想小説

【ネタバレ有】レモンタルト/長野 まゆみ【初読感想】

この記事は約11分で読めます。

うわぁーーーーー!! 長野まゆみさんだ!!!

と、なってました。
この空気感!
この文体!!
このキャラ造形!!

いや、長野まゆみさんですよね……。

この“死んだ姉の夫(主人公から見ると義兄)に恋をして、玄関がそれぞれにある一軒家に一緒に暮らしている主人公”って、もうそれはボーイズラブなんですよ。
その義兄がイケメンで格好良くて、かぎりなく他人に近い主人公(死んだ妻の弟)の存在を大事に扱うでもなく無視するでもなく、家族に対するほどよい無関心さと距離感で接しているくせに、時々距離感をバグらせてくるのも、もうボーイズラブなんですよ。

この「え。ちょっと待って。主人公が義兄に恋してるのは分かった。だったら、義兄はどうなの? 恋してるの? 違うの?!」って、読んでいる私を混乱させたまま、結局義兄の心の内が全く分からない状態で話が終わるのも、うん、すっごくボーイズラブ。

この一見すると定番の王道ボーイズラブ展開を長野まゆみチックに演出すると、こんなにも耽美というか、艶めいたというか、しっとりとした言葉にしようのない雰囲気の小説になるんだよな……。
すごいなぁー……。

というわけで、最高でした。
長野まゆみさんの本だった。

義兄とのこの表現しにくい関係もそうなんだけど。
あまりにセクハラがまかり通っている主人公の会社とか、主人公が陥るトラブルの数々が、「……これ、令和だったらコンプラ違反で誰かのクビが飛んでもおかしくねぇな……」ってレベルのものばかりで、それも踏まえて、世界観が一昔前なのもいいんですよ。

一昔前の、なんか令和の今ほど人権って騒がれてなかった時代の空気感+義兄との距離感が、絶妙。

令和だったら訴えられても文句言えないレベルの職場だよ、主人公。
さっさとやめたほうがいいよ、絶対。
そんなことを思いながらも、その職場関係でこれまた格好いい男性陣と主人公が出会ったりするので、ますますボーイズラブなんだよなぁー。

主人公が義兄のことを好きなのは分かるのに、この本自体が主人公目線なので、義兄が何を思っているのか分からないのもいい。
義兄の態度が頼りになる面倒見のいいお兄ちゃんムーブにも見えるし、一方で好きな相手に意地悪をする人間にも見える。
主人公のことを好いているのだとしたら、主人公と義兄を繋げている“死んだ姉”の存在とどう折り合いをつけるのかも気になる。……まあ、物語は二人の関係がまったく縮まらないまま(逆にいうと前進も後退もしていない)ので、このふたりはずっとこのままなのでは? とも思うし、このままで動かずにいれば今の状態を維持できるとふたりとも思っていて、距離感を詰めずにいるようにも見える。

あれだな、ボーイズラブならふたりはくっつくんだろうけど。(あるいは義兄を諦めた主人公が別の男と結ばれる)長野まゆみさんの作品だからこそ、“現状維持”が描かれているのもこの作家さんらしい。

というわけで、「レモンタルト/長野 まゆみ」の感想でした。
前回読んだ長野まゆみさんの本には今回のような恋愛要素がなかったので忘れてたけど、私、こういう長野まゆみさんの本が大好きだったんだわ。

それでは、次の一冊でまた!

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