うん、長野まゆみさんの作品の中では結構読みやすい部類の作品。
私、長野まゆみさんの本って「謎がそのままになってる」「分からないなりに面白い」「というか分からないのを前提にして物語を楽しめ」みたいなものだと思っている節があるんですが、今回のはすごく読みやすかった。
伏線がどこにあるのか分かるし。
伏線がキレイに回収されてるし。
たとえばタイトルにもなっている「白いひつじ」の謎とか、謎めいた先輩たちの正体とか、先輩達がみんな親切にしてくれている中で、どういうわけか一人だけ悪意をむけてくる百合子の存在とか。
読んでいる時は、「え? これってどういうこと?」って首を傾げるのは、いつもの長野まゆみさん節とも言えるんだけど、今回はきっちりと謎を回収してくれるので、「あ。そっか、そういうことか」ですんなりと納得できる。
そして、納得した上で長野まゆみさん特有の世界観が失われていないから好き。
この、BLチックな独特の空気感いいよね……。
長野まゆみさんの話の特徴として、「男性同士の同性愛がごく当たり前に認知されている」があげられると思うんだけど、今回もそういう空気感で物語が進むし、最初の舞台がシェアハウスのような寮なので、読んでいるこっちは「え。ここで、何が起こるの?!」とワクワクしちゃう。
しかも登場する先輩達は一癖も二癖もある人達ばかりで魅力的。
唯一主人公に冷たい(まあこれも話を読み進めていくと、いわゆる“好きな子に意地悪したい男の子”的発想だと分かるんですが)百合子の行動も謎めいていて、不可解で面白い。
しいていうなら、序盤で寮の話が出てきたので、「これ、寮生活の話なのかな?」と思っていたら、途中から主人公の出生の秘密(実は養子で実の親が別にいる)に話題がシフトして、最終的には主人公を中心にした家族の話になった点かな。
寮での謎めいた先輩達とのめくるめくボーイズラブ展開を期待していた身としては、読み終わった後に「あれ? 案外、寮の話少なかったな?!」となったんですよねぇ……。
まあその癖のある先輩達は、実は主人公が最後まで会えなかった実の兄(プロローグで主人公と喋っていた男がお兄ちゃんで、本編開始時には病死してる)の友人達だったから、主人公に親切だったというネタばらしがあるので、完全に本編からずれた立ち位置にいるってわけでもない。
……というか、よくよく考えてみたら序盤で部屋探しに苦心している主人公をさりげなく自分達のシェアハウスまで誘導してるので、全部読み終わった後で振り返ると、「え、主人公のお兄ちゃんの友達達、もう主人公を囲い込む気満々だったじゃん」となるんですが。
言葉だけ見ると、「死んだ友人の遺言とはいえ、何も知らない弟を教えないまま寮に誘導して住まわせようとする(一応決定権は主人公にあったけど)のって、ヤバくない……。ホラーじゃない……?」ってなるんですが、そのあたりの感情は長野まゆみさんが丁寧な優しい文章で書いてるんで、なんか許せる感じになってるのがすごい。(私が主人公だったら絶対に警戒する)
というわけで、「白いひつじ/長野まゆみ」の感想でした。
長野まゆみさんらしいBLチックな雰囲気を漂わせながらも、伏線回収をがっつりやっている読みやすい一冊でした!
それでは、次の一冊でまた!


コメント