ホラーだと思ってたら、ミステリーだった?!
……っていうケースは私の中ではそれなりにあるんですが(予言の島とか)。
今回に関していうと、表紙がモロにホラーチックで、タイトルもホラーっぽくて、作者さんもホラーを書いている人という印象があったので、「あ、ホラー小説だ」と思った次第。
なので読み始めて序盤で、「あれ?」となる。
なんとなく……、ホラーの雰囲気がしない。
民俗学や祟りの話が最初にあるんだけど、なんとなくホラーの雰囲気がない。
ホラー特有の、「ここからホラーがはじまります! 覚悟しろよ!!」って空気感がない。
民俗学や祟りの話も、怖がらせるというよりは「こういう風習があってねぇ……」という授業のような空気感なので怖くないし、むしろ「へぇ……、こういう話があるんだ」と頷きながら読んでいた。
というわけで、怖くないままに話がはじまり、人が死ぬわけですが……、やっぱり怖さはない。
ホラー要素は出てくるんだけど、怖さと直結しない。
それが悪いってわけではなくて、私の中ではこの本は民俗学を下地にしたミステリー小説なんだろうなっていう想像が出来ていたからだと思う。
ホラーとミステリーの融合といえば、大島清昭さんの「影踏亭の怪談」とかかなって思うんだけど。
あっちはホラーをがっつり入れながらミステリーも入っていて、最終的には全部を覆い隠すようにホラーが全部をかっ攫っていって終わり、なんですよね。
でもこっちの本は、主題はミステリー。
副題と脅かし要素はホラー。
ホラーのほうは“人智が及ばないものには触れないでおく”というスタンスなので、最初の殺人で発生した“首がねじ曲がった死体の謎”は解明されない。
ミステリーだったらここはめっちゃ謎解き要素だろ!! って思うので、このあたりはホラーチックなんだけど、ミステリーの「解き明かすことが目的」とホラーの「怖がらせることが目的」のいいとこ取りをしてる本だなと思う。
あと登場人物達の会話が軽快で、物語の中の空気があまり重たくならないのも、ホラーっぽく感じない要素になってるのかな。
個人的には、謎がこれでもかと登場した最後に名探偵が謎を解決する、二時間ドラマを眺めているような気持ちだった。エンタメ色の強いミステリー小説(時々ホラー要素が混じる)という印象。
というわけで、「寿ぐ嫁首 怪民研に於ける記録と推理/三津田 信三」の感想でした。
三津田さんの本は二冊目なんですが、二冊ともどちらかと言えばミステリー寄りの作品だったので……、次はホラー小説を読んでみたいな。
それでは、次の一冊でまた!


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