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読書感想小説

【ネタバレ有】スイート・マイホーム/神津凛子【初読感想】

この記事は約11分で読めます。

どうも。
ホラーにおける仕掛けって読者が分かっていても登場人物達は知らなくて、「いや、なんでそうするんだよ!」って叫びたくなることもあるけど、その手のもどかしさと面白さがいい感じでした。

というか。

生きてる人間が一番怖い。(真理)

「家に巣くうなにか」自体は、すぐに分かるんですよ。
私でも第一章の中盤ぐらいで、「……これ、本田さんが家に住み着いてないか……?」って思ったし、推測できる情報もたくさんあるし。

一級建築士の資格を持っていて担当を任されていて、主人公達依頼人の家族と親密だったらそりゃあ家の中をいじりたい放題では? ってなりますよねぇ。盗聴器ぐらい仕掛けてそうと思ってましたが、盗聴器なんて生半可なものじゃなかった……。がっつり住み着いてましたよ、本田さん……。

ただここからが本番。
本田さんが家に住み着いてる? そんなの関係ないね! 本当の恐怖はここからだぜ!! と言わんばかりに畳みかけてくる展開がいい。

甘利さんが死ぬし、友梨恵さんも死ぬし、多分殺したの本田さんだろうし、「理想の家族に近づくなってことか?」って想像していたら、この“理想の家族”って言葉がヤバイ。
ただ主人公達家族を見守りたいではなくて、「自分が思い描く理想の家族でないなら壊す(殺すですらない)」なのが、狂気最骨頂の本田さん。
自分が主人公家族に取り入るのを邪魔する甘利さんを殺害したり、主人公の不倫相手だった友梨恵さんを理想の家族像に邪魔だから殺したり……っていうのは、まあどうにか想像の範疇内だったけど、主人公家族に新しく生まれた娘を不要だからって排除しようとするのは、行き過ぎなんですよ……。

娘ちゃんに手を出した時点で「ん? なんか、狂気度合いが想像以上……?」と首を傾げていたら、どんどん出てくる本田さんのモノローグ。やべぇ過去。

この話、本田さんじゃなくて、閉所恐怖症である主人公の隠された過去とか、統合失調症になったお兄さんのこととか、他にも伏線はたくさんあるんだけど。
最後のほうで明かされる「実は主人公の父親を殺したのは主人公だった(兄は主人公や母親を守り切れなかったことで病んだ)」事実よりも終始漂っている本田さんのやばさのインパクトが強くて、あんまり印象に残ってないんですよね……。なんでや。

作者さんのこの「どのあたりでこの情報を出せば読者がドン引くか?」って計算しつくされたような構成大好き……。

いやいや最初、本田さん、気の毒な女性だと思ってましたよ。
家庭を持つ女性だと思っていたら婚約者を亡くしたって情報が出てきて、そしたら婚約者を殺したのは実は本田さんだって分かって、「理想の家族には娘はひとりでいい」って理由も開示されて。
最初に抱いた好感度が振り子のごとくぐわんぐわん揺れ動いて、「な、なんなんだよ、この女?!」と頭を抱えて終わり。

本田さん自身への恐怖心と、その本田さんが自分が設計した家の中に隠れている(そして「理想の家族」が理想のままいるように監視している)事実が怖い。

この本田さんがなにより怖い。
本田さん自体がホラー。
とりあえず、ちゃんと死ぬタイプの女性でよかった。(リカシリーズのリカみたいに拳銃で撃たれても元気なやつもいますからねぇ……
まあ、ちゃんと死ぬタイプの女性でも、自分が設計した家に住み着くって時点で、めっちゃホラーなんですが。

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