最後の最後で明かされるどんでん返しが秀逸で、そのシーンで落とされる爆弾の大きさと、「そういえばあのシーンって……」と思わず振り返る伏線のさりげなさと納得感がすごくて、もう満足。
伏線好きの私としては、もう「実は語り手こそが「男」だった」って展開が最高なんですよね……。
いや、一ミリもその可能性を考えてなかった。
「女」は「男」を愛したら千年の記憶を失う。「男」は「女」を愛したら千年の記憶を取り戻す。そして語り手の杏は記憶を持っている、性別は女性だし「女」のほうだよね……? と思っていたら、実は「男」のほうだった! そして「女」はルームメイトの祥子さんだったっていうオチがいい。
でも振り返ると、それっぽい描写や台詞はいくつもあって、納得の展開。
伏線ってこういうのだよねぇー、いいよねぇー。
この話の肝となる「女」と「男」はすでに出会っていて愛を確認して、そして「女」が記憶を失っているからこその、この後日談のような展開なんだよなぁ。
もっというなら、私はこれからも続いていくだろう、神様と「女」と「男」の愛の物語の一部分を切り取って小説として読ませていただけただけで、ふたりの後日談と前日譚が混じり合ったような物語はずっと続いていくんだろうなぁ。
最初は「「女」である語り手は、千年の記憶を失うのが怖くて「運命の相手」を探すのを辞めたのでは?」っていう憶測から入り、「でも「運命の相手」を見ても記憶をなくさないってことは、もう愛は冷めたってことなんでは?」って邪推が混じり、最後に「いいや! もう出会ってるんなら、そりゃあ探す必要ないじゃん!」っていう結論に伏線を回収しつつ綺麗に着地するの、読んでて楽しかったー!
この作者さんの言葉選びの凄さは、前回に読ませて頂いた「彗星を追うヴァンパイア」で十分に知っていたんですが、今回も堪能させていただきました! うれしい!
一人の「女」のために奮闘する神様と「男」の図、世間に溢れかえっている典型的な恋愛小説の構図……、ぽくも見えなくない。
神様の「女」に対する献身を見た時は、「結構シンプルかも?」となったけど、最後まで読むと、そんな考えは吹っ飛んだ。
タイトルの「愛されてんだと自覚しな」って言葉が、「女」と「男」だけじゃなくて、ふたりにややこしい転生の呪いをかけた神様にも通じてくるのが、言葉のチョイスが素敵なんだよ……。
というか、「そっか。千年間ずっと一人の女性を愛し続けてる神様の一途さや、千年の記憶を取り戻した後で添い遂げる「男」もだけど、なんやかんやで「男」を愛したら千年の記憶を失うのに、その後も心のどこかでずっと「男」の事を想い続けてる「女」がもすげぇんだな」ってなる、物語の中心を射貫くタイトルなんですよね。
愛って、なんかすげぇなぁー……。
神様や「男」が「女」を思い続けるのは、まあ千年の記憶があるから分かるんだけど。
そこに女からの「愛されてんだと自覚しな」が加わると、「千年の記憶の寄る辺が消えても「男」を愛し続ける「女」」っていうなんかとんでもなく凄いものを魅せられた気持ちになる。
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