最近、オカルトとミステリーを混ぜた話が大好きな私ですが、「有栖川有栖の本にも幽霊が出てくる小説があるんだって?!」となってました。
いやぁー、だって、有栖川有栖といえば火村先生(作家アリス)シリーズじゃないですかぁー!
当然、火村先生シリーズには幽霊は出てこないし。
幽霊が出てくるようなミステリーを有栖川有栖が書いてるとはちっとも思わず、知ってから即入手。
有栖川有栖の本はいくつか読んでいるけど全部火村先生シリーズなので、今回初めて違うシリーズに挑戦したわけですよ。
なんだろ、この、凄く安心安定したストーリー展開。
幽霊が視える探偵(濱地)は出てくる。
幽霊も出てくる。
なんだったら幽霊が悪さをしたり、不穏な展開もそこそこある。
でも、ミステリー。
幽霊やオカルトがお茶を濁すわけでもない、地に足がついたミステリー。
オカルト要素はあるけど、しっかりとミステリーがオカルトの手綱を握っていて、私が嫌いな「ミステリーだと思っていたのに、最後の最後でオカルトに全部ぶん投げた?!」という展開もない。
満足ひとしおの、幽霊が実在するミステリー。
安心安定。
さすがは本格ミステリーを書く有栖川有栖先生の作品。
大前提としてミステリーがあって、そのミステリーへの風味付けにオカルト要素を一滴足したような空気感。
幽霊は出てくるけど、その幽霊が暴れ回るでもなく、話を押し流していくわけでもなく、あくまでも幽霊やオカルトをきっかけにして、現実の事件が解決していくスタイル。
このミステリーとオカルトの塩梅が、実にいい。
地に足がついたというか、幽霊という非現実がスパイスになってより作品が面白くなってる一方で、事件解決自体は現実感があるので、読んでいて納得感が強い。
今まで読んできたミステリーとオカルトの融合だと、ミステリーだったのが急にホラーになったり、ミステリーがおざなりでオカルトで締めくくったりだったので、今回の本みたいな「ミステリーがしっかりと組み上がった上でほんの少しオカルト要素が加わる」感じの本はほとんどなかった。
面白いなぁー。
「地羊鬼の孤独」みたいに最後の最後でホラーが全部を押し流していく系のミステリーも好きなんですけど、ほんのちょっとのホラー風味でミステリーを楽しむならこっちの本かなと思います。
特に読んでて「これ、凄いなぁー!!」と思ったのが、分身とアリバイでの双子アリバイトリック。
いやもう「双子アリバイトリック」って書いてる時点で、「いやいや、でもミステリー小説で双子のアリバイトリックはあかんよ。下の下だよ。やっちゃいけないよ」って思うんですが、この話の場合はまず双子って単語以前に、“生き霊”や“ドッペルゲンガー”っていうオカルト用語が出てくるのがミソ。
この生き霊とポルターガイストがいい味を出してくれてる。
最初は、「幽霊が実在する世界だから、なんらかの方法で犯人が生き霊を出したのかな? それでアリバイトリックをした??」って考えるんだけど、読み進めて行くうちに実は犯人は双子でした! というラストなんですよねぇー。
文章に書くと、「えー……、下の下じゃん。むしろミステリーの禁じ手じゃん」ってなるんだけど、その話の展開(最初はオカルトっぽく話が進んで、最終的には双子だったというオチに至るまでのストーリー)が、“幽霊が実在する世界”ならではの空気感があって好き。
生き霊もポルターガイストもあり得るかもしれないと思考を持って行かれた状態からの、「そうだよ! 双子っていう禁じ手があったよ!!」っていうネタばらしがいい。
そして普通のミステリーなら「こんなトリック」と言われそうな双子トリックを、オカルト要素を混ぜ合わせることであっと驚くトリックに昇格させた有栖川有栖のすごさですよ……。
有栖川有栖の凄さは火村先生シリーズで知ってたけど、今回の本を読んでますます、「すげぇな。この作家さん」ってなってました。
このシリーズ、まだ2冊あるんで、続きがたのしみ。
今回はどんな感じの本なのか手探りで読んでいたので、次からは犯人が当てられるといいなぁー。
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