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読書感想小説

【ネタバレ有】黒面の狐/三津田信三【初読感想】

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み、三津田さんの本の中にホラー小説じゃない本ってあるんだ……。

twitterで流れてくる三津田さんの本がずっと気になっていて、フォロワーさんに「はじめて三津田さんの本を読むんだけど、おすすめある?」的な事を聞いて、教えていただいた一冊。
私が“三津田さんはホラー小説しか書いてない”と思い込んでいたばかりに、読み進めて動揺する。

これ、ホラー小説じゃないんだ?!

いや、序盤はホラーテイストだったけど。
戦後の炭鉱を舞台に、炭鉱のオカルトとか風習とかそういうのが語られるシーンがあるから、ホラーチックではあるんだけど!
でも蓋を開けてみると、犯人は生きてる人間だし、そんなに露骨にオカルト的な出来事が起こっているわけじゃないので、ミステリー小説だった。

そして、面白い。

うん。この本はね、タイトル通り「狐」に化かされる話だと思うんですよ。
犯人は主人公と出会った時にはもう嘘をついてるし。
その嘘が分かるのが終盤も終盤なので、殺されていく被害者達の共通点が分からないし。
中盤ぐらいでなんとなく、「……こういうことかな?」って予測はつくんだけど、でもまさか犯人が主人公と出会う前から入れ替わっているとは思わないじゃん?! 被害者と犯人の因縁が物語以前にあるのは察してたけど!!

そしてこの入れ替わりトリックに気づくと、この本の構図が分かる。
それにゾッとする。

序盤でかなり詳しめに戦時中のことを書いていたり。
戦時中や戦後の炭鉱の悲惨さを書いていたり。
終盤の手記の内容とか詳細に書かれていたり。
これらって最初は「犯人にとって大事な友人の境遇や、犯人が友人のために殺人を犯す動機」として用意されているものだと思ってたんだけど、実は犯人こそその死んだ友人だったと分かった瞬間に、話ががらりと変わってくるんだよ。

この世界の変わり方が好き。

友人のための復讐、ではなくて。
自分自身のための復讐。
手記に書かれている悲惨な出来事が犯人自身の経験だと分かった途端、「あ。これ、犯人が殺人を犯すのも無理ないわ……」って理解する一瞬。

最高ですね。うん。

この一瞬の動揺と理解を味わうために、この本を読んでたんだ。私。
正直序盤の説明が想像以上に長くて、なかなか話が動き出さないのにモヤモヤして、「な、長いな……。でも戦後の話だから、このあたりの情勢のことを理解しておかないと、難しいのかな……」と少し面倒になりながら読んでたんだけど。
まさか最後の最後になって、その序盤の説明がとんでもなく話に重みを持たせる要素に変身するとは思ってなかったよ……。

というわけで、「黒面の狐/三津田信三」の感想でした。
この本、再読したら絶対に面白いだろうな。
一回目は主人公の視点で、過去の因縁も何も知らない状態で読んで衝撃を受けたので。
二回目は犯人視点で、「この時に犯人は××してたんだよなぁー」って思いながら読んでみたい。
大変なのはこの本、444ページあるからおいそれと手が出せない点なんだけど……。いつかもう一回読みたいな。

それでは、次の一冊でまた!

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