初! 冲方さん!!
というわけで、冲方丁さんは有名な人だし、名前は存じあげていたんですが。
今回、初冲方さんですよぉー!!
というわけで、ホラー小説です。
いや、冲方さんといえば時代小説だし。
もっと遡ると、ラノベ作家では……? となるんですが、読んだのはホラー小説です。
そして、怖い。
典型的な巻き込まれ型主人公。
呪いに立ち向かっていくというよりは、終始呪いに翻弄される人の話。
ホラー小説においては、落ち度があってどんどん泥沼に陥っていく主人公と、そもそもホラー系の才能があって関わっていく主人公が多いと思うんですが。
この「骨灰」の主人公は、どちらでもない。
普通のサラリーマンが会社の仕事中に怪異に巻き込まれて、得体の知れない現象に巻き込まれていく。
本当に、運が悪く巻き込まれた人。
そして頼れる霊能力者もいない。
思えばホラー小説で頼りになる霊能力者って、都合よすぎるよね。
自分達の日常を考えるなら、そんなに簡単に出会えるとは思えない。(しかも信頼できる、本当に才能がある霊能力者に)
怪奇現象に巻き込まれた人間が霊能力者に出会えること自体が、いわばファンタジーともいえる。
そして主人公は自分が狂っている事に気づかない。
そーだよね! 気づかないよね!!
気づいたら、そもそも狂ってるって言わないよね!!
周りの人間や読んでる私が、「おいおい! これヤバいんじゃ? 主人公ヤバいのでは?」と冷や汗をかきながら読む最中に、主人公はますます狂気の沙汰に落ちていく。
最終的には死亡フラグは回避できたけど、でも、途中までは素直に死亡エンドだと思ってたよ。
終盤まで死亡フラグ、全滅エンドしかご用意されていない印象。
主人公が救われそうな要素が出てきたら、ことごとくそれを踏み潰して消し去っていく展開、おかしいと心の中では気づいているのに操られる主人公、死んでいく人間。
それが淡々と描かれる文章。
このあたりの絶望感がぎゅっと凝縮されていて、終盤まで主人公が助かる道筋がほんとうに見えない。
さすがは、冲方丁……。
めっちゃ怖いやん……。
そして何が怖いって、この本における怪異の正体ですよね……。
ホラー小説だと「怪異はこれですよ」ってお出しされるケースもあるわけで。
その場合、とりあえずその怪異をどうにか出来ればいいんだけど、この本の怪異はとんでもなく得体がしれない。
これまで東京で焼かれて死んだ人間達の怨念の集合体? という、スケールが大きすぎて、もう退治するというよりはやり過ごすしかない相手なのが、怖い。
本の中で「退治できました! お疲れ様でした!!」とはいかない。
うまくやり過ごして目をそらして、そうして生きていくしかない。
こういう絶望感をひしひしと伝わってくる小説でした。
というわけで、「骨灰/冲方丁」の感想でした。
正直、結構細かく東京の地名が出てくるので、東京を知らない田舎民としては、「え? あ、あぁー……。はい」みたいな感じだったんですが、読んでて面白かったです。
最近のホラー小説ではあまり感じない“解決したから大丈夫”っていう感じがなくて、助かった後も薄氷の上を歩いているような不安定さがあるのがいい。
こういう、「結果的に助かったけど、これって本当に助かったの?」ってなるの、いいですよね……。ゾクゾクして。
それでは、次の一冊でまた!


コメント