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【ネタバレ有】冬期限定ボンボンショコラ事件/米澤穂信【感想】

この記事は約4分で読めます。

というわけで、冬期限定ボンボンショコラ事件を読み終わりました!

冬期限定ボンボンショコラ事件 〈小市民〉シリーズ (創元推理文庫)

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いやっほう! これで小市民シリーズ読破だー!! やったー!!

そして今回の冬期限定ボンボンショコラ事件は、これまでの春・夏・秋の集大成!
なんというか、今までの雰囲気とはちょっと違う。
冬の雪が降ってる感じというか、しんしんと降り積もっていく感じというか。

今までの小市民シリーズって、「シリーズを通して起こった事件(もしくは一冊の本の中で起こった事件)を解いていく話」だったんだけど、今回の話で感じたのは“積み重ねっていく”感じ。

今までそれとなく語られてきた「どうして小鳩君と小佐内さんは小市民を目指すのか?」が描かれていて、これまでなんだかんだで挫折を味わってこなかったふたりの挫折や、小市民を目指すきっかけとなった事件から続く事件の話になっていて、「おお、ようやく二人の謎が解けるのか!」とワクワクする一方で、病院のベッドから動けない小鳩君の対比が好き。

なんやかんやで今までアクティブに動いてた小鳩君が、車にひかれてベッドの上。
しかも何故車にはねられたのかもさっぱり分からない。
読んでいる私に分かるのは、「高校生の小鳩君がはねられた事件と、中3の時に小鳩君達が出くわした事件がよく似てるんだ?」ってことぐらい。

なので、めっちゃ生き生きと事件を解決しようとする中3の小鳩君がいます。

めっちゃクソ餓鬼な小鳩君が。
確かにこんな子どもに色々痛い腹を探られたらむかつくよなぁー……、と。

なんだろ……、この小鳩君、秋期限定栗きんとん事件で小佐内さんに滅多打ちにされた瓜野君によく似てるんですよね……。自分だったらできる、周りに注目される、褒めて貰えるっていう、野望というか自己肯定感マックスな感じが。
そしてそれが理由で周りにうざがられたり疎遠にされるけど、そんなことをまったく気にせず、自分の信じる(自分が望む結末を得られるように)突っ走ってるところとか。
おかげでその顛末も瓜野君同様に破滅的(瓜野くんみたいに彼女(小佐内さん)にフルボッコにされるほどではないにしろ)で、小鳩君が高校生になってどうして小市民を目指したのかが伝わってくるほどだし。

で、そんな将来の自尊心の破滅を約束された中3の小鳩君の推理を見つつ、一方で車にはねられた高校生の小鳩君の様子が描かれているんだけど、中3の頃の事件と同じ場所で車にはねられたり、ひき逃げした車が発見されなかったり、似たような共通点を示しながら話は進んでいくわけでして。

過去と現在を行ったり来たりしてるから、現在のほうは小鳩君が入院してるから事件の解決は進んでないように見えるんだけど、実は過去と現在がしっかりリンクしてて犯人が分かるのがすごい。

そしてきっちり小鳩君の後悔つき。

過去があってこその現実、というか、過去にあんなことがあったから現実があるというか。
取り返しのつかない絶望が用意されることもあるだろうけど、この作品内においては、小鳩君が少しでも救われてくれてよかったと思う。

なんだろ。
中3ってまだまだ子どもだし、色々やらかして後悔することも多いだろうし……、小鳩君のそれも言ってしまえば「若気の至りで起こしてしまったこと」なんだけど、その「若気の至り」が現在(高校生)の小鳩君にしっかりと災難として降りかかってくるんですよね……。

でもその災難から小鳩君を助けてくれるのは、中3から高3までに築いてきた関係だったり、小佐内さんだったり健吾君だったり、中3からずっと抱えていた後悔だったり。
小鳩君が後悔しててノートを綴らなければ結末は変わっていただろうし。

やっぱり、積み重ねかな。

今までは「小市民を目指す」小鳩君しか見てなかったけど、推理がしたくてしたくてたまらない中3の小鳩君がどういう子なのか分かってくると、小鳩君がどうして小市民になりたいのか(なんやかんやで人に褒められたい年相応の男の子だった)っていうのが伝わってくるのが好き。

あー……、面白かったー……。
春は甘酸っぱくて夏はちょっと陽気で秋は小鳩君と小佐内さんが巡り巡っていつもの関係に戻って、そうして今回の冬なわけですが、「あー、終わるんだなぁー」ってしんみり。

正直今回の冬期限定ボンボンショコラ事件、感想を書くのが難しい。
これまでの春・夏・秋の集大成であり、これまで小鳩君がやってきたことの「報い」と「救い」が現れる話であり、小市民シリーズの最後に読むにはぴったりの話だと思う。

ひとまず私の中の小市民シリーズ行脚はこれにて終了です。ごちそう様でした。(まあ短編集とか出たらまた読むんですが、楽しかったです!)

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