なんとなく表紙が気になったので、手に取ってみた一冊。
帯をちゃんと読んでいなかったので知らなかったんですが、蓋を開けてみるとかなり本格的なミステリー小説だった。
もしかするとこの時点ですでに、私は色々と失敗していたのかもしれない。
本格ミステリーだと分かっていたらもう少し本腰を入れて読み進めていたかもしれないけど、まあ、それは今更なので仕方ない。
登場人物達の何気ない会話、仕草、行動のすべてが伏線となってラストまでなだれ込んでいき、謎が解けていく展開。
伏線が伏線だと分からないので話の流れで伏線だと分かった時の、「え?!あれって伏線だったの!」の連続。
一回目では全部の伏線を理解して読み切るのは私には不可能なので、ちゃんと本を理解しようと思ったら再読が必要なんだと思う。
が、正直、二回読みたいとはあんまり思わない。
いや、ごめん。
伏線好きなんだけど、この本の伏線はあんまり好きじゃない。
読み終わって、「伏線好きだけど……。んー?」と考えてみたんですが、好みの本ではなかったという結論に達しました。
伏線は貼られてるけど、伏線を回収する快感をあんまり感じないというか……。
あまりに伏線がさりげなさすぎて、回収した時には伏線自体を忘れてしまっていて、「え? その話、どこにあったっけ?」となって、読む手が止まるというか。
文章が結構淡々としてるので、さらっと伏線が回収されて終わり、という印象。
伏線=感動、ではなくて、伏線=真相に辿り着くためのノルマ回収、って感じなんですよね。
で、その真相自体もあんまりびっくりしないというか。淡々とした文章なので驚くこともなく、「あ。そうなの?」という感じで、いまいち話に乗りきれない。
伏線ってただ貼ってたらいいってもんじゃないんだな、と実感した。
伏線としての存在感を維持してないと、伏線が回収された時に戸惑うんだよな。(あと、主人公が伏線を回収しても、回収に至るまでの根拠が分からないと、「え? それってどういう発想でそうなるの?」となるので、やっぱり混乱する)
思っていた以上に楽しめなかった。
なんというか、伏線が張られて回収されて、それを眺めている内に話が淡々と進んで終わってしまった、という感覚。
もしかすると伏線以前の話で、この本の文体と相性がすこぶる悪かったのかもしれない(もうちょっと情緒溢れる感じの文章の方が好き、というのはあるかも)
というわけで、「午前零時の評議室/衣刀信吾」の感想でした。
私がもう少し頭が良いか、あるいはもう少し記憶力があれば、この怒濤の伏線ラッシュも乗り越えて楽しめたのかも知れないけど……、私の手にはあまる一冊でした。
それでは、次の一冊でまた!


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