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★★★★☆読書感想小説

【ネタバレ有】ノッキンオン・ロックドドア2/青崎有吾【初読感想】

この記事は約12分で読めます。

最後の最後であがる花火が一番キレイ。

……というのをぼんやり思いつつ、本を閉じましたね。
いや、本当に。

1巻目の感想文で「キャラの掘り下げが少ない!」と叫んでいたわけですが、読み終わりましたよ、2巻目。
そして、情緒がぐちゃぐちゃになりました。

いやぁー……、まあ、1巻目の時からキャラの掘り下げが少ないって思ってましたよ。
2巻目で掘り下げするんだろうなぁー、と思ってましたよ。
なので、2巻目の最後の話でキャラたちの掘り下げがあった時は、「おおー。やっぱりそうなるんだ」と思いましたよ。
でも。

誰も、あそこまでやれとは言っていない。

言葉がでない。
語彙力が足りないとかではなく、読み終わった時の「なんなの、こいつら……」と茫然。
いやだってさ、1巻まるまると2巻の途中までずっと軽口を叩いて楽しそうに共同生活してるふたりが、実は5年前の事件の被害者と加害者だったなんて、誰が気づくよ?!

分かった瞬間に、すべてが変わるじゃん。
これまでの軽快な会話。ふたりのコミュニケーション。
それら全部が今までは「大学の時からの友人同士であるふたり」だったのに、最後の話が語られた直後から「殺されそうになった人間(被害者)と殺しそうになった人間(加害者)」に変わるんだよ?
まったく意味が違ってくる、世界が変わる。

……そりゃあこの設定、まじで最後の話でするしかねぇわ……。

これまでの会話が愉快であればあるほど、その奥にある「被害者と加害者」っていう関係の暗がりがいっそう際立つ。
今まで光を見せられていた読者がその暗がりに気づいて目をやった瞬間、想像以上に真っ黒で深くてゾッとする。……いや私はマジでこの倒理と氷雨の関係性を知った時に言葉を失ったので、この最後に用意された世界が反転するような爆弾の威力はすごい。

逆に言うとあまりに凄すぎて、そりゃあ1巻ではほのめかすしかできないよなぁー……と納得しました。

そして、私がいいなぁーと思うのが、この5年前の事件の内容なんだよね。
自分が犯した罪から逃げないために、密室と呼ぶにはあまりにも行き当たりばったりな密室を作った氷雨(まあ倒理を殺しかけたのも計画的ではなかったから、その場でトリックを考えたんだろうし)、自分を殺そうとした氷雨の名前ではなくて別の友人の名前を書いた倒理(氷雨を犯罪者にしたくなかったから)

このシリーズの事件の中で、5年前の事件は毛色が違う。
氷雨は自分の罪を確定させるために(密室を作って逃げたら言い逃れできないと理解した上で)密室を作り、倒理は犯人を告発せずに自分の思いを託す目的で犯人以外の名前を書き(「お前を犯罪者にしたくなかった」)、お互いが事件に目を背けた状態で、でも完全に逃げ切ろうともせずに宙ぶらりんな状態でいる。

この宙ぶらりんなまま過ぎた5年間が、すごく……いい。

いや、“いい”って言葉は正しいのかな。
でも、氷雨からすれば言い逃れしないために作った密室が密室のまま放置され、謎が解かれないままの5年間で。
倒理からすれば、自分を殺そうとした相手との5年間の共同生活なんだけど、でも倒理の中では「お前を犯罪者にしたくなかった」が答えで。
氷雨が抱えていた「倒理に殺されたがっている(あるいは罰を与えてほしいと思っている)」という罪悪感は、下手をすると事件直後に倒理が氷雨の名前をダイイングメッセージとして残さなかった時点で、もう行き場を失っているかもしれないのに、それに気づかずに抱え続けた5年間で。
でも、探偵としては倒理が密室やトリック担当だから、氷雨のトリックを見破れるはずだし。(まあそれ以前に氷雨に切りつけられた時にしっかり意識があるんで、自分を殺そうとしてる犯人は分かってるんだけど)
氷雨は犯人の動機担当だから、倒理のダイイングメッセージの意味を察してもいいはずだし。
なのに、それでもずっと宙ぶらりんだった(互いに得意分野であるにも関わらず触れずにいた5年前の事件)っていうのがね。

この5年間の重み、すごいな。

終わりよければすべてよしって言葉が小説に適用されるかは分からないけど、私はこの本を「終わりよければすべてよし」で締めくくりたい。

というわけで、「ノッキンオン・ロックドドア2/青崎有吾」の感想でした。
1巻目はキャラの掘り下げが少なくて物足りなかったけど、2巻目で最大級の爆弾が投下されたので、うん、結構満足しています。

それでは、次の一冊でまた!

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