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★★★★☆読書感想小説

【ネタバレ有】蜘蛛の牢より落つるもの/原浩【初読感想】

この記事は約11分で読めます。

私、こういう作品好きだわー。

ホラーだと思っていたら実はミステリーっていう展開が大好き。
ホラーとして提示されていたものが実はミステリーで、“人の手にあまる怪異現象が実は人間の手によって行われていた結果、それが解明されて人間の理解の範疇に収まる”のが好き。

この本、まさしく、そういう本じゃないかな。

最初はホラー。
中盤から違和感が出てきて、終盤はミステリー。
でもラストは得体の知れない怖さで終わる、本を閉じると「あー。面白かった!!」となる一冊。

この最後の「面白かった!!」を味わえるのが、貴重なんだよ……。
めっちゃ私好み。
しかも読み終わった後に改めて読み返してみると、バリバリのホラーかと思っていた序盤にもミステリーのヒントが散りばめられてるので、察しのいい人なら早い段階でこれがホラーの皮を被ったミステリーだと気づける仕様。

だから完全にホラーに振り切っているわけじゃなくて、読んでいる側に「これは実はホラーではなくてミステリーなんでは?」と考える余地がある。

私は主人公の指谷さんの上司である富さんが殺されたあたりから、「あれ? なんかこれ、人間の手が加わってないか?」と勘づいたんだけど、早い人はもっと早くに気づくんだろうなぁー。
でも気づかなくても、終盤でちゃんと謎解き(ホラーとして語られていた部分が実は怪異現象ではなかったという説明)がされるので、読んでいても振り落とされることがない。
「あぁ! なるほど! そういうことだったんだ!!」と納得しながら読み終えられたので、私は大満足でした。(言い換えればミステリーを読み慣れてる人だったら、このあたりの謎なんてすぐに看破しちゃうんだろうし、ホラーとしては怖さ満点で面白いけどミステリーとしては物足りない作品なのかも……?)

作中に出てくる「人の悪意が時に怪異に変貌する」って言葉もいいよね。

これ、よくよく考えてみるとミステリーがホラーに擬態してるって意味なんだけど。
怪異は人の業の深さであるとも捉えることができて、ホラーの皮を被ったミステリー小説であるこの作品にとてもよく似合う言葉だと思う。

で、私、この本を読んで一番言いたい事は、この作品に北斗君が出てること。

そう、作者さんの代表作といってもいい「火喰鳥を、喰う」で登場した北斗君が出てくるんですよねぇー、びっくり。
twitterの情報で火喰鳥に登場したキャラのひとりがこっちの作品にも出ているとは知ってたけど、まさか北斗、お前だったとは……。
正直、火喰鳥で彼がやらかしたことを思い返すとそれだけで、「て、てめぇ!! こっちでは何をやらかす気だよ!!」とファイティングポーズを取りたくなるんですが(それぐらい彼のやらかしはすごい)、でも登場するだけで読者をぞわぞわっとさせる登場人物も面白いし、私は存分に楽しめました。

いやぁ、作者さん的には北斗君みたいな存在だけで世界観がぶっ壊れるような衝撃を読者に与えるキャラの登場は不本意かもしれないけど、うん、まあ北斗君だし……。(そしてこの作品自体は火喰鳥の前の話らしいので、あのやらかしをする前ということは……。って考えると、それはそれで味わい深いんですよねぇー)

というわけで、「蜘蛛の牢より落つるもの/原浩」の感想でした。
いやいや、最高の一冊でした。こういうホラーの皮を被ったミステリー小説、大好きなんだわ。
またこういう本に出会いたい。

それでは、次の一冊でまた!

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