歴史のイフっていいよね……!
そういう意味ではこの本って花丸満点というか、「あー……、本当にこうだったかも」と思わせてくるからすごい。めっちゃすごい。
史実というか、本来の歴史ではそこまで接点がなかったらしい、江戸川乱歩と杉原千畝。
それぞれの分野ですごい功績を残したふたりが“実は友人同士だったなら?”という、とんでもなく面白そうな歴史のイフを取り上げつつ、それぞれの人生に影響し合うふたりがすごくよかった。
ただただ仲がいいわけじゃなくて。
時には反発して、時には面倒事を押しつけて、時には喧嘩して。
でもお互いにお互いを評する時の言葉が「友人」であるという関係……、めっちゃ、尊くないですか。
イフ話じゃなくて、このふたりが本当に友人同士で、こんなふうにお互いに影響し合いながら生きていたならよかったのになぁー……なんて思うぐらいには尊い。
正直、このふたりが史実ではどこまで知り合いだったかは分からないけど、(学歴を見ると学校の先輩後輩なのは間違いないけど、確実に接点があったかは謎らしい)この本を読んでいるうちに薄らと、「いや、これが史実だろ。ふたりは友人同士だったんだ!」と思い込む人がいてもおかしくはない。
そのぐらい、ふたりの関係性が尊いんですよ……。
そして私がこの本を読んで一番思ったのが、「平和って大事だよな」っていうシンプルなこと。
この本、おどろおどろしい創作をする江戸川乱歩と、人を利用する外交の世界で生きる杉原千畝の物語だから、千畝の視点から見たときの乱歩さんの作品に対する感想が、結構グサッとくるんですよね。
乱歩さんの作品は怖いし気持ち悪いし凄惨だけど、それよりももっと酷くて生々しいことが現実では起こっている。
それを外交の世界で見せつけられてきた千畝にとって、江戸川乱歩の作品は結局は虚構であり、偽物。
これって、私が生きてる世界にも言えないかなって。
私は戦争をテーマにした小説もアニメも見る。
でも私がこの「戦争」をエンタメとして消化して楽しめるのは、結局のところ、私が存在しているこの場所が平和で穏やかだからで、私が戦争に巻き込まれていたら、きっと同じように楽しむことはできない。
小説にかぎらず、不幸な物語を楽しむためには、それを楽しめるだけの健全で平和な世界が必要である。……そういう事なんじゃないだろうか。
というわけで、「乱歩と千畝 RAMPOとSEMPO/青柳碧人」の感想でした。
最初は堅苦しい小説かなって思ったけど、思ってた以上に面白くて、思わぬところで平和について考えさせられる一冊でした。
それでは、次の一冊でまた!


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