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読書感想小説

【ネタバレ有】死体埋め部の悔恨と青春/斜線堂有紀【初読感想】

この記事は約15分で読めます。

読み終わった後に手放しで、「面白かった!!」と叫べる本は貴重だと思う。

今まで結構な数の本を読んできて、感想も書いてきたわけですが。(ブクログに登録した本は100冊を越えてるので、もう100冊は感想文を書いたわけですよ。脅威すぎる)
その中でも、面白かった本と面白くなかった本は当然存在するわけで。
『彗星を追うヴァンパイア』みたいに、何かあるたびに「面白かった!」と引き合いに出す作品もあるけど、そういう作品の方が稀で、読書って意外と自分好みの当たりをひく確率が低い趣味なのかもしれない。

そんな中で、久し振りに当たりだった。

めっちゃ面白かった。

タイトルそのままに、死体を埋めに行く短編集。
死体を埋めに行くまでの道中で、「なぜこの人は殺されたのか?」を推理するっていう、不謹慎極まりないストーリー展開。
しかも正解があるわけではなく、それっぽい結論は出るものの、最終的には死体ごと山に埋められて終わってしまう。

もちろん、探偵なんていない。
しいていうなら、倫理観もない。

で、そのどうしようもないシーン(死体を埋めに行くっていう、まあ暗くなりがちなシーン)で行われる推理合戦。
メインの登場人物ふたりが話し合い、そのそばには殺された死体、死体の死因を推理するふたり。……いや、文章にするだけでも不謹慎さがすげぇな、この本。
とにかくこのふたりの会話と、会話の間に横たわっている地の文のリズムが最高によくて、読み終わった後に「あー……、めっちゃ面白かった!!」ってなってました。

救いっていうのが、道徳的なものを指すなら、このふたりが出会った瞬間に、それは消し飛んでる。

死体を埋めに行く話だから。

冒頭で主人公の祝部君がうっかり人を殺してしまった時点では、まだ道徳は生きてたんだろうけど。
そこに織賀が登場して、祝部君が織賀の手を取った時点で、道徳は死滅してふたりの世界になった。……というか、このふたりの“死体を埋める共犯からはじまったどうしようもない関係”がすごくいいんだわ。
致命的に犯罪行為で、ばれれば即警察案件だというのに、ふたりの間には軽快な台詞が飛び交っている。その軽快な会話は同じ大学の先輩と後輩の会話なんだけど、もしあの日死体と一緒に挟んでいなければ、ふたりのこの会話は存在していなかった。

大学生の青春そのもののような輝かしい会話の下には、死体が埋まっている。
気のいい先輩と先輩を慕う後輩の構図なのに、その間には死体が横たわっている。

気分があれか? 桜がきれいに咲くのは、根元に死体が埋まってるからなんだぜっていう。

読んでいる人間には死体が見える。
死体を埋めていない時にだって、地の文から死体の気配を感じていて、でも物語全体から伝わってくるのは死体の腐臭ではなくて、大学生活を謳歌する(なんだったら死体を埋める行為はその端っこにぶら下がっている非日常)ふたりの大学生の話が書かれている。

このギャップにクラクラする感じ、そしてふたりの会話に惹かれる感覚。

やっぱり、「すごく好み」って言葉がすごく似合う本なんだよなぁー。

作者さんのセンスがいいね!
この作者さんの本というと、キネマ探偵カレイドミステリー 会縁奇縁のリエナクトメントも好きなんだけど、やっぱりキャラ同士の会話が好きなんですよ。

斜線堂先生の本って、実際にこういうことを喋ってそうな人がいるよなぁーって思わせるキャラの描き方が秀逸なんだよなぁー。

もう好きってことでいいね、この本は。
そういうことにしよう。

というわけで、「死体埋め部の悔恨と青春」の感想でした。
今回の一冊で一応話自体は終わってるんだけど、続きがあるので(そっちもゲット済みなので)、読んでいこうと思います。
楽しみー!

それでは、次の一冊でまた!

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